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見出し北朝鮮投資の魅力とリスク   (2013年10月6日)


















富強製薬会社 全勝勲・社長
 北朝鮮は魅力ある投資先なのか。日本政府は「拉致問題の未解決」を理由に独自の経済制裁を実施しているので、日本企業の北朝鮮進出は、現時点では難しい。しかし、友好国・中国は別として、欧州、中東の幾つかの企業は北朝鮮を「魅力的な投資先の一つ」と考えているようだ。
 スイス・パンケミー社のロベルト・オット・シュワムレ社長は、北朝鮮投資について次のように語っている。
 「一部では北朝鮮を戦争の危険があるところだと言っているが、それは事実とまったく違う。平和は強力な国防力、強力な戦争抑止力によって保たれるものであるからだ。北朝鮮には核武力を主とする強力な武装力がある。その力で北朝鮮を侵略しようとする者を一気に打ちのめすことができるばかりか、侵略の意志をまったく持てないようにするのが重要な一面である。指導者と人民は一心団結している。これは世界中に知られているから、どの国も北朝鮮を侵犯して不安な情勢を惹起(じゃっき)させることができない。韓国で砲声がとどろいても北朝鮮の子供たちは安心して遊び、国民は歌を歌いながら創造と建設を続けている。北朝鮮で人民のための遊戯娯楽施設と、外国人も楽しめる膨大な施設を大々的に建設しているのは、北朝鮮にすでに永遠な平和が訪れていることを示す重要な証拠である」。
 この意見には賛否両論あるだろう。しかし、事実の一面を突いているのは否めない。米国の出方次第の面があるが、今後、米朝関係が良い方向で改善するならば、北朝鮮を魅力ある投資先と考え、進出する企業が増えることが予想される。
 北朝鮮の労働者の質はアジアでも上位に位置することも忘れてはならないだろう。北朝鮮の経済環境は、かつてのミャンマーを思い起こす。日本企業はミャンマーに対し、欧米の経済制裁に配慮して進出をためらってきた。その間に、中国、韓国の企業がミャンマーに進出し、「ラストフロンティ」としてミャンマーが見直された時には、「時遅し」の感があった。
 拉致事件は許されない事件である。もし、拉致被害者が今も生存しているなら、皆元気に日本へ戻って欲しい。だが、それを実現するためと称して、日本政府が続けてきた「圧力」一辺倒の政策は、効果があっただろうか。北朝鮮とは対話・外交交渉も視野に入れるべきだろう。
 安倍政権は最近(9月16日「拉致被害者救出国民集会」)も「圧力をかけながら、何とか対話に持ち込みたい」と強調している。しかし、日本がかけられる「圧力」とは何があるのだろうか。欧州、中東の一部の企業が北朝鮮を魅力ある投資先との評価をさせている中で、「圧力」という言葉を「武器」にするだけの政治姿勢は虚しくなる。

政治的安定度と投資

 政治不安定によって政権交代が頻発し、ストや反政府デモ、サボタージュなどが続く国に、投資しようとする外国企業はない。どこかの国のように執権与党が数年で野党に下り、野党が執権与党になる現象も投資先としての魅力には欠ける。その意味では北朝鮮は安定している。この安定を「独裁・恐怖政治」と簡単に切り捨てられるだろうか。
 例えばシンガポール。この国の経済発展は、建国以来の一貫した人民行動党が率いる「開発独裁の賜物」とも言われてきた。労働者党などの野党は、存在したものの、その政治活動・言論は制限され、投獄や国外追放などの厳しい弾圧に晒されてきた。 モンゴル・アジア製薬会社のグンガー・バヤルジャルガル社長は、北朝鮮の安定性を次のように分析している。
 「世界的に政治的安定度がいちばん高い国はまさに北朝鮮です。北朝鮮の指導者・金正恩第一書記は、アジアの平和が脅かされている時、小さな木造船に乗って最大のホットスポット(最前線)を訪れ、子供を愛撫し、平和守護のための重大措置を講じ、帰り道にまた国民の幸福のための建設現場を現地指導しています。そして、彼の廻りに集まる朝鮮人民の団結力が、最上の政治的安定と永遠な平和を保つ証拠ではなでしょうか」。
 もちろん、恐怖政治下でのストライキ、反政府デモの禁止に賛同できない。しかし、国の方向は国民が決めるものだ。中東に吹き荒れた「春の風」。風は嵐となって残されたのは混乱だけだったのではないか。もし、北朝鮮を投資先として考えた場合、企業の関心は、政治制度よりも経済政策だろう。資本が保護され、契約の一方的変更や破棄がないことが重要である。かつて、シンガポールに進出した企業は、人民行動党の「開発独裁」の政治体制に躊躇したのだろうか。

北朝鮮経営者の分析

 北朝鮮の富強製薬会社は、いま積極的に海外進出を展開している。全勝勲・社長は北朝鮮のなかで、数少ない海外経済事情通である。全勝勲・社長に北朝鮮の経済政策などを伺った。北朝鮮事情をよく知らず、偏見が見受けられる日本メディアの北朝鮮報道にさらされている方々らには、「手前味噌」に聞こえる部分があると思うが、全社長の説明をまずは、聞いてみていただきたい。
 
―北朝鮮の対外経済政策に不信を持つ企業も多いと思いますが。
 政府は対外経済分野において信用第一主義を最重要の政策としている。政府はこの政策を貫徹するため信用度の高い経済機関を評価し、国際的信用度の低い経済機関を批判・処罰し、国境で物資の搬・出入手順を大幅簡素化し、手続き時間の短縮、商品の品質向上で国際的競争力を高めている。特に、北朝鮮に進出する外国企業に対する政府の特恵的な奨励および保護措置と償還保障措置は国の信用度を高めることに大きく寄与している。
 
―投資先としての北朝鮮の魅力は。
 投資魅力地帯は外部の大きな援助や投資なしに自力で経済的復興が遂げられたところ(安定した内需)、国民の一般知識水準が高く(労働力の質が高い)、一般犯罪がないか、あるいは少ないところ(社会が安定しているところ)であるべきだ。その点で北朝鮮は、今まで60年間、戦争の廃墟の上に威力ある自立的民族経済を建設し、科学技術強国、核保有国、人工衛星保有国となった。
 我が国が外部からの大規模の援助や借款なしに、むしろ米国の絶え間ない経済制裁だけを受けながらもこのようなめざましい経済建設成果を収めることができたのは、偉大な指導者の賢明な指導があり、我が国の社会主義経済が優越であったからだ。
 
―北朝鮮のような社会主義・計画経済と資本主義は相容れないのではないか。
 資本主義市場経済は金融市場と証券市場で「ブル」(上げ相場であると見る者)と「ベア」(下げ相場であると見る者)との間の最大取引の合意相場を当日相場に発表することから回転が始まる。「ベア」は貨幣や証券を売却し、「ブル」は買い入れたが、翌日になると一人は得し、ほかの一人は損している。このように、資本主義経済は最初から強い投機性と矛盾をもって回転する。
 一部の海外メディアは数年前のアメリカでのサブプライム住宅ローン問題によって始まった金融危機がますます拡大されていると懸念している。報道によると最近、米大手自動車メーカーのゼネラル・モーターズ社の本拠地であるデトロイト市が破産を宣布し、アメリカの50州はいずれも財政危機に瀕しているという。
 アメリカの財政赤字は4年連続毎年、1兆ドルを越えているし、絶対多数の国民は最悪の貧困に陥っているが、億万長者の財産総額は昨年、その前年比8パーセント増で2兆500億ドルに上がったという。
 しかし、我が国(北朝鮮)ではすべての商品と経済機関の相場展望を科学的に分析、予見し、生産者大衆と広範囲に討議して作成した科学的かつ客観的で、動員的な計画に基づいて経済活動が行われている。
 そのため、経済的試練はあったけれど、経済危機や過剰生産、有価証券の乱発のようなものがなく、全般的生産力が国の経済発展にもっとも合理的に寄与している。
 たとえば、わが社(富強製薬会社)は20余年前から世界的な医薬品需要の増加を科学的に予見し、医薬品の開発に力を入れた。わが社で開発した「金糖―2注射薬」と血宮不老錠が世界的な人気薬品になり、30余カ国に大量輸出されている現実は我が政府の人間愛の政治と優越な経済制度による結実である。
 自前の技術と資材で人工衛星を打ち上げた奇跡的成果と全国のCNC化が高い水準で実現されている現実をはじめ最先端を突破し、世界的な覇権を握った実例は多くある。その上、12年制義務教育制によって人民の一般文化知識水準が非常に高くなり、一般犯罪がほとんどない我が国は、投資先としての魅力が増している。

 
(Asia Watch Network 北朝鮮取材班)
 








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