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見出し北朝鮮とデモ      (2013年3月4日)

 



 北朝鮮は、昨年末、国連食糧農業機関(FAO)に「食糧不足国家」と再指定された。その一方で、北朝鮮はここ数年、平壌市内に高層ビルを建て、公園等の公共施設の拡充をはかっている。また、数十億の資金を投入しロケット発射を続けた。

 こうしたアンバランスな現象に対して、日本や韓国のメディアは「平壌の発展は見せかけで、地方は十数年前から配給が中断し人民生活は逼迫している」と報道してきた。そして、多くの国では、反政府デモが多発し国内は混乱、体制崩壊へ向かうのが一般的だが、北朝鮮がそうならないのは、「締め付けで体制を維持している」と解釈してきた。

 北朝鮮から報道されるデモ(=市民の集団的意志表示)は、反政府的なデモではなく、指導部の死守、制度の守護を呼びかけるデモだけだ。最近では、ロケット打上げの国連の制裁決議を糾弾する数十万規模のデモ・集会が平壌市内の金日成広場であった。 
 慢性的食糧難と言われる北朝鮮で、人民が当局(権力)に対し、生活改善や地位向上に向けた、「中東の春」のような民衆の過激な行動、デモが何故ないのか、不思議に思う人は多いだろう。

 中東の春は、2010年から2011年にかけて広まった民主化運動で、1968年チェコスロヴァキアで起きた改革「プラハの春」になぞらえた表現とされる。この「春」の風は、チュニジアで2010年12月に吹きはじめ、「ジャスミン革命」により、チュニジアでは23年続いたベンアリ政権に終止符が打たれた。
  「春」は中東の盟主・エジプトにも伝播し、2011年2月ムバラク政権を崩壊させ、リビアでも政権打倒の動きが激化した。日本の外務省は「フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)によって連帯と情報共有を図り、かつてないスピードで国境を越えて民主化運動が拡大していった」(外務省HPより)と分析した。
 さらに、一部メディアはジャスミン革命や「中東の春」の波が、中国や北朝鮮にも影響を与える、と希望的に報道した。しかし、中国や北朝鮮の指導部は、中東諸国の政権よりも注意深く、したたかだ。社会構造も違う。SNSを当局が制御でき、場合によっては一瞬にして断ち切るのが中国、北朝鮮である。

 「中東の春」の後、現地に残ったのは、混乱状態でしかなかった。「春」が過ぎたあと、灼熱の夏が続いている。このことを北朝鮮当局も人民も知っている。金正日総書記の急逝後、新しい指導体制に移行したが、国民生活の向上は、足踏みの状態にある。しかし、北朝鮮のどこでも見られる「一心団結」のスローガンは人民に体質化されていて、「情報」で彼らの心を変えさせるのは難しいのが現実だ。



(Asia Watch Network 小堀新之助)











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