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見出し最前線視察と木造船    (2013年4月25日)

 





 北朝鮮の真意を探るには、報道の「行間を読む」ことが必要だ。映像でも活字の記事でも同じだ。最近気になったのは3月7日の報道である。中央通信は「金正恩第1書記が「(2010年11月の延坪島砲撃の最前線基地でもある)長在島防御隊と茂島防御隊を視察した」と伝えた。翌日には視察映像がテレビで放映されている。
 長在島と茂島は韓国・延坪島に近い。黄海の北方限界線(NLL)付近にある。この2つの島は、北朝鮮の地図では黄海南道康?郡釜浦の沖に小さな点として表記されている。

 視察の行われた3月7日は、国連安全保障理事会が公式会合を開き、北朝鮮の核実験に対して制裁決議案を採択した日だ。制裁決議に対し、「延坪島砲撃を忘れるな」という北朝鮮の意思が読み取ることができる。
 また、映像の「行間」では金正恩第1書記が乗船した船が気になる。昨年8月にも同じ場所を第1書記は小さな木造船で視察している。今回の長在島、茂島の各防御隊視察にも同じように小さな木造船を使っている。
 軍視察の目的は国際社会に対する「戦争準備」の意志表示と受取れるが、それにしては、国の首班であり、軍では最高司令官であり元帥の称号を持つ人物が、小さな船に乗艦したのはなぜか…興味が尽きない。
 最高司令官・金正恩元帥が乗艦した船の周りには護衛艦さえ見えなかった。北朝鮮は首脳部の護衛を絶対とする国である。となると、小さな船は、韓国を欺くための意図的な戦術、演出なのか。

 北朝鮮の歴代指導者はいつも質素な生活を唱え、周囲にも倹約を訴えた。金正恩第1書記もやはりこの一年間、質素さを標ぼうし、国民の視線を気にしてきた。市民と分け隔てなく席をともにして鑑賞したコンサート、護衛兵のいない参観、遊園地の完工式で外交官らと一緒にアトラクションを楽しむ姿、子供たちに囲まれた少年団大会、
兵士と肩を組んで撮った記念写真……。
 これらの映像は「金正恩第1書記の民心掌握を意図とした欺瞞映像だ」との指摘もある。欺瞞には強要や演出が必要だ。
 これらの映像に写りこんだ北朝鮮の人民の笑顔、感激の涙は演出なのだろうか。外交官は強制され遊園地の乗り物を楽しんだのか。

 北朝鮮は孤軍奮闘、米国を中心とする国連の制裁に立ち向かっている。北朝鮮にはロケットもあり、核実験をやる技術もある。国連が制裁を強めても、北朝鮮の選択を阻む効果は十分に発揮されずにいる。むしろ、北朝鮮の強硬姿勢を加速化する結果だけを招いているのではないか、と思う。

 いま、世界中でテロの脅威が心配されている。標的にされそうな国では、元首はもとより閣僚クラスでも護衛官に囲まれて移動していると聞く。その中で、ロケットも核も持つ国の最高指導者兼軍の最高司令官が、無防備な船で最前線を視察し、市民の中に飛び込み、微笑んでいる国が北朝鮮である。この指導者の余裕はどこから来るのか。
 敵対国に対する演出か、ただの強がりだけなのだろうか。しかし、その国が、有事の際は米国、日本、韓国を標的にすると公言し、緊張を激化させているのは事実だ。


(Asia Watch Network 小堀新之助) 











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