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見出し楽器製作にみる“職人気質”      (2015年10月2日)
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第8回平壌楽器展示会に出品された楽器類





楽器製作者 バク・ソンギュさん



金元均平壌音楽総合大学・楽器製作学部
オク・グィナム
さん
 前回、北朝鮮の“モノ作り意識”の変化について、企業意識としての「ブランド製品」を例に挙げて紹介した。今回は「企業」ではなく、「個人」いわば「職人気質」として楽器製作を取り上げる。
 バイオリンの名器「ストラディバリウス」はイタリアの弦楽器製作者、アントニオ・ストラディバリが作ったのもので、現在約600挺が存在するとされている。このバイオリンは数千万から数億円で取引されるというから、こうなると芸術品の世界だ。

 北朝鮮では2年ごとに楽器の品評会が開催されている。前回(2年前)から「平壌楽器展示会」という行事名になった。 今年は全国の楽器製作所や演奏家が丹精こめて作った楽器やその関連部品、50種類、1,4000点余りが出品された。
 注目を集めたのは楽器メーカーよりも個人が作った楽器だった。「名器」と言われる楽器はほとんど手作りであるから、同じような傾向が北朝鮮でも見られたことになる。

 朝鮮の地方都市のハムフンのバク・ソンギュさん(41歳)は「平壌楽器展示会」にギターやバイオリン、御恩琴を出品した。御恩琴とは金正日総書記が金日成総合大学に通っていた1962年8月、軍事野営地で作ったとされる琴である。
 「うちは父親の時からギターやバイオリンのような楽器を作っています」と自慢するパクさんは、良い音色を出すために蔦紅葉やカエデ、エゾマツなどを材料にし、塗料は白頭山火山灰を微分して化学的方法で処理したものを使う。この処理で楽器の耐久性が向上する、という。天然材料なので脱色はしない。

 バクさんはバイオリン1挺を作るのに約60日間の手間をかける。 数人の演奏家が彼のバイオリンとドイツ製のベルゴンズ社バイオリンが奏でる音質を比べてみたところ、「音色はほぼ同じ」と評価した。
 父親から引き継がれた製作技術を駆使し、燃える情熱を注いで作り上げるバクさんの楽器製作技術は驚異的に向上している――専門家たちの評価だ。
 バクさんは「父親はいつも私に外国の技術と材料でなく、われわれの力と技術でもって必ず世界の有名な楽器に並ぶものを作るべきだと言ってくれました」と話す。
 金元均平壌音楽総合大学・楽器製作学部の5年生、オク・グィナムさん(23歳)は「今回の展示会は前回よりずいぶん発展して学ぶことが多い。私も大学を卒業したらきっと立派な楽器製作者になるつもりだ」と誓う。

 楽器製作は、素材の良し悪しを判断する目と確かな音感、優れた技術力が必要だ。技術力、モノ作りへの向上心は社会人全体が育てる。北朝鮮の“モノ作り意識”は、世界を目指している。


(AsiaWatch Network 小堀 新之助)














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