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見出し特別供覧「金日成主席と日本」    47.共朝日善隣は日本をも利する  
日)

 1972年9月のある日。うねる波に揺られながら南浦(ナンポ)港へ向かって1隻の客船がゆっくり進んでいた。そこには金日成主席に会うべく、朝鮮に向かう『毎日新聞』の記者団が乗っていた。港に着き、下船するとかわいい少女が駆け寄ってかぐわしい花束を記者団団長に贈った。
 当時、日本政府の策動で朝日関係は深刻な事態にあった。日本の人民と進歩的階層、経済および貿易界では、対朝鮮経済交流の拡大と日朝両国の国交正常化を要求する声が高まっていた。そうした高まりの中で朝鮮国際貿易促進委員会と日朝友好促進議員連盟、日朝貿易会は両国間の貿易を促進するための合意書に調印し、これを受けて朝鮮政府は日本の貿易業者と技術者の朝鮮入国を許可していた。にもかかわらず、日本政府は合意書を認めず、朝鮮の貿易代表団と技術者の日本入国も朝鮮貿易代表部の設置も許さなかった。そんな状況のもとで、日本政府が合意書を認め、朝鮮貿易代表部が日本に設けられるまで、朝鮮国際貿易促進委員会は暫定的に「株式会社朝日輸出入商社」にその機能を委任した。
 ところが、日本政府は、ありもしない「スパイ事件」なるものをでっち上げて、総聯幹部と在日同胞を不当に逮捕、投獄し、罪のない在日朝鮮公民に暴行を加え、無惨に殺害するなどの挙に出た。4年前、東京地方裁判所は、日本当局が朴正煕(パクチョンヒ)傀儡一味と結んででっち上げた「スパイ事件」の裁判で、罪のない在日朝鮮人李さんに懲役6カ月、鄭さんには懲役4カ月、執行猶予2年の判決を言い渡していた。日本当局の言う「スパイ事件」が朴正煕傀儡一味と共謀した日本当局によりでっち上げられた事件であることはすぐに暴露された。事件は、日本警視庁当局が朴正煕傀儡一味の特務チャン・ユシクを利用してでっち上げたものであった。警視庁当局は、チャン・ユシクが日本に「密入国」したとして「逮捕」し、「2人の在日朝鮮人が自分を南朝鮮に出国させてやると約束し、実際は自分を共和国に送ろうとした」と供述させ、それを唯一の「証拠」として先の2人を逮捕、拘禁し、裁判所は不当な判決を宣告したのである。チャン・ユシクは実は船員証を持って日本に入国していたので、日本当局が言う「密入国」ではなく、従って「密出国」すべきなんらの必要もなかった。それに警察に「拘留」されていたチャン・ユシクはいつ釈放されたのか、南朝鮮当局の指示で「本国」に逃げ帰ってしまった。
 こうしてみると、先の判決が日本当局と南朝鮮当局の共謀によるものであったことは明らかである。日本当局がアメリカ帝国主義の傀儡朴正煕一味と野合して在日朝鮮人に迫害を加えた裏には、凶悪な目的がひそんでいた。それは日本政府が、ありもしない「北からの南侵脅威」を口実に南朝鮮全域に「非常事態」を宣言し、戦争策動に狂奔する朴正煕傀儡一味を支援する一方、祖国統一に向けて果敢にたたかっている南朝鮮人民に声援を送っていた在日朝鮮人の気勢をくじき、さらなる弾圧に乗り出すためであった。朝鮮民主主義人民共和国政府はすでに数回にわたり、日本当局が国際法と国際的慣例に従って主権国家の海外公民である在日朝鮮人の人権を保護し、彼らの外国人としてのすべての権利と待遇を保障し、在日同胞に対する一切の弾圧と殺人蛮行を中止するよう強く要求していた。
 ところが、日本政府は在日朝鮮公民の民主主義的民族権利を抹殺すべく関連悪法の制定を画策した。佐藤政府の策動は、当時、突然始まったのではなかった。日本政府は1966年から1968年にかけて毎年、在日朝鮮公民の民主主義的民族教育の弾圧をはかり、「外国人学校法案」なるものを国会に上程し、なんとしても通過させようとはかったが、内外の反対にあってそのつど不発に終わっていた。日本政府は世論をしずめ、適切な時期に「外国人学校法」をあくまで制定する目的で、「外国人学校制度は別に定める」という条項を加えた「学校教育法の一部改正案」をまたしても国会に上程した。これは、在日朝鮮人の民主主義的民族教育に干渉し、弾圧することで、在日朝鮮人の子女に「同和教育」を強要する「外国人教育法」を何がなんでも制定しようとする術策で、その裏には、朝鮮敵視政策を一段と強化し、朴正煕傀儡一味を懐柔して南朝鮮再侵略の道を開こうとする意図が隠されていた。
 一方、佐藤政府は権力機構を動かし、ならず者どもを使嗾して朝鮮人を殺害し、集団暴行を加え、総聯弾圧を強化した。彼らは岐阜県に住む李さんを刺し殺すなど、朝鮮人を殺害し、学生たちに相ついで危害を加えた。東京警視庁外事課の警察官数十名が総聯東京都本部品川支部の総聯幹部たちを逮捕、拘禁し、家宅捜索を強行し、また総聯東京都本部墨田支部幹部の家を襲い家宅捜索した。東京地下鉄の西日暮里駅ではおよそ30名の日本人無頼漢が3人の朝鮮人学生に集団暴行を加えて重傷を負わせ、東京の王子駅付近では20名ほどの無頼漢が1人の朝鮮人学生に集団暴行を働いた。
 また、富山県富山市では一無頼漢が朝鮮人女性を刺して傷を負わせる事件が発生した。朝鮮人学生に対する無頼漢の相つぐ集団暴行は、組織的・計画的性格を帯びていた。そうした時期に金日成主席は『毎日新聞』記者代表団に接見したのであった。
 1972年9月17日。主席は、朝鮮記者同盟中央委員会を通じてあなたがたの質問を受け取ったとして、その一つ一つに回答を与え、朝鮮と日本との関係問題についてこう語った。
 「ご存知のように、かつて佐藤内閣のとき日本政府はわが国に対して非常に極端な敵視政策をとってきました。しかし、今田中内閣は佐藤内閣に比べてわが国に対する敵視政策をやや緩和する気運を示しています。佐藤は在日朝鮮公民の祖国への往来や海外旅行に極力反対しました。今では、一部の在日朝鮮公民の海外旅行を許可しており、在日朝鮮公民の祖国訪問も部分的ではあるが認めています。これはよいことだと思います。しかし朝日両国間の関係で、すべての問題が解決されたとみることはできません。朝日両国間の関係が正常化するためには、まだ多くの問題が解決されなければなりません。朝日両国間に友好関係を結び、正常な国交を樹立するためにはまず、日本政府がわが国に対する態度を改めるべきです。今日まで朝日両国間に友好関係が結ばれていないのは、もっぱら日本政府のわが国に対する敵視政策のためです。日本政府が朝鮮半島の内政に干渉せず、わが国に対して友好的態度をとるならば、朝日両国間の問題はすべて容易に解決されるでしょう。朝日両国間の関係問題に対するわれわれの立場は一貫しています。朝鮮民主主義人民共和国は、創建当初からたとえ社会制度は異なるにしても、日本と善隣関係を結ぶことを望んできたし、今日も両国間の異常な事態に一日も早く終止符をうち、正常な関係を樹立することを望んでいます。日本政府がわが国と善隣関係を持とうとするならば、当然、一辺倒政策をとるべきではなく、朝鮮半島の南と北に対していかなる侵略的性格も持たない等距離政策を実施すべきです。こうして、朝鮮の統一促進に寄与しなければなりません。日本政府が一辺倒政策を実施し、いずれか一方を他方に反対するように後押しして、朝鮮半島で不和をかもし出そうとするのは非常によくない行動です。日本政府は、隣の朝鮮半島が安定し、南北朝鮮が統一されて、平和に、幸福に暮らすことを願うべきです。隣でけんかをし、騒がしくては、日本としてもよいはずはないでしょう。われわれは、日本政府が隣邦のわが国に対して友好的な政策を実施するのが、日本のためにも必要であると思います。
 もちろん、わが国と日本の間には体制上の違いがあります。しかし現在、日本政府が社会制度の相異なる国とも外交関係をもっている以上、わが国に対しても平等な立場でのぞみ、平和共存の5原則に基づいて国交関係を樹立するのが正しいと考えます。われわれは日本と国交関係を結ぶ前でも、記者や技術者をはじめ各界人士の往来をひんぱんにし、経済、文化の交流を広く進める用意をもっています。このような交流は一方的なものとなってはならず、あくまでも平等と互恵の原則のもとに行われるべきであります。ご承知のように、現在、朝日両国間には部分的な交流が行われています。しかし、それは日本政府の非友好的な態度によって一方的な性格をまぬがれていません。記者の交流問題一つをみても、日本の記者であるあなたがたはわが国を訪問することができても、わが国の記者は日本に行くことができません。このように交流が一方的なものになっては、決して両国間の友好関係を発展させることができません。われわれは具体的な手続きはどうあれ、朝日両国間の善隣関係が結ばれるかどうかは、もっぱら日本政府の態度にかかっていると認めます。
 朝日両国間に友好関係を結ぶうえで、日本政府が在日朝鮮公民の民族的権利を保障することがきわめて重要です。外国公民の民族的権利を保障するのは当然なことであり、それは国際法の要求するところです。しかし今日、在日朝鮮公民は朝鮮民主主義人民共和国の国籍をもっているにもかかわらず、外国人としての相応の待遇を受けていません。これも、わが国に対する日本政府の非友好的な態度の現れであります。われわれは、何よりも在日朝鮮公民の民族教育の権利が十分に保障されるべきであり、帰国の権利と祖国への往来の自由が保障されるべきであると主張します。あなたがたは、近年日本が経済的に急速な発展を遂げた結果、国際的にいろいろと批判を呼び起こしているとして、日本の現状と対外政策に対するわれわれの意見をただしましたが、これについて簡単に述べようと思います。われわれは、日本の経済の発展に対して悪くは考えていません。自分の隣邦が経済的に発展するのを悪く思う必要があるでしょうか。日本の経済が発展し、それが軍国主義の復活と他国への侵略に利用されず、日本人民の物質・文化生活の向上と、他国との友好関係の発展に貢献するならば、非常に好ましいことです。
 しかしこれまで、日本の反動支配層は、日本独占資本の復活とその支配体制の確立に基づいて国の軍国化を促進し、他国を侵略しようと狡猾に策動してきました。日本の反動層は、今のところ海外に派兵こそしていませんが、今後他国を軍事的に侵略する足場をつくっています。こういうところに、日本軍国主義復活の危険性が現れています」。
 続けて主席は、今日、日本の反動層は国の軍国化を積極的に推し進めながら、「援助者」の仮面をかぶってためらいもなく他国を侵略する道に踏み込んでいるとし、彼らは、東南アジアの一部の国の経済的困難を利用して、これらの国に「政府借款」「直接投資」「合弁企業」といった名目で資本の輸出を強め、それらの国の経済的命脈を握ろうとしており、「経済援助」に多くの政治的付帯条件をつけて一部の新興独立国を右傾化させ、反帝戦線から切り離そうと策している、と指摘した。
 主席は、特に日本の支配層が、犯罪的な「韓日協定」の締結を契機に、南朝鮮に対する経済的浸透を本格化し、経済的浸透についで政治的・軍事的浸透を進め、再び南朝鮮を完全な植民地に変えようと狂奔しているとし、最近、日本当局者がソウルを訪れて、南朝鮮の為政者たちと「韓日閣僚会談」なるものを開き、南朝鮮の反動層に「援助」を与える代償として、「工業所有権協定」を締結することに合意をみたとのことだが、これは南朝鮮を経済的に日本に従属させるための露骨な侵略行為だと断定し、日本と南朝鮮との間に「工業所有権協定」が結ばれれば、日本の独占体が南朝鮮で経済活動に特権を持つことになり、南朝鮮の経済は貪欲な日本独占資本に一層徹底的に従属するようになる、こうなれば、日本帝国主義者が1894年に、日本人の財産と日本居留民を保護するという口実でわが国を侵略したのと同じように、再び南朝鮮を侵略するおそれがある、このように日本独占資本は、日本軍国主義のために海外侵略の道を切り開いている、朝鮮人民は日本独占資本の肥大化に警戒心を高めており、日本経済の軍国化とその海外侵略に反対して断固たたかっているとして、こう続けた。「日本の反動層は、歴史の教訓を忘れてはならず、日本経済の軍国化と海外侵略策動をやめるべきです。もし、彼らが歴史の教訓を忘れて引き続き海外侵略の道を進むならば、朝鮮人民と世界の進歩的人民の闘争によって再び恥ずべき敗北をこうむるでありましょう」。
 主席は、朝鮮人民は日本軍国主義の復活と日本反動層の海外侵略策動に反対する日本人民の正義の闘争に連帯を送るとして、こう述べた。
 「わたしは、この機会をかりて、民主主義的民族権利を守るための在日朝鮮公民の闘争を援助し、祖国の自主的平和統一をめざす朝鮮人民の闘争に積極的な支持を寄せている日本人民と、日本の進歩的な言論界のみなさんに挨拶を送ります」。 
 記者たちは、朝鮮に対して友好的な政策を実施するのは日本のためにも必要であるとする主席の言葉を噛みしめていた。