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見出し特別供覧「金日成主席と日本」    49. 共一辺倒よりも等距離  
日)

 金日成主席は、『世界』編集局長の朝鮮訪問を歓迎し、あわせて岩波書店社長が手紙を寄せてくれたことに謝意を表し、帰れば社長に挨拶を伝えてほしいと言った後、質問に答えた。主席は、『毎日新聞』の記者たちにも話したが、あなたにも概括して話すことにしようと言い、チュチェ思想が生まれた経緯とその根源について詳細に説明した。
 ついで主席は、昨年のアジア情勢の発展をどう評価しているかという質問に答えた。
 「昨年、日本人民の闘争もたいへん力強く繰り広げられました。日本人民の闘争が強力に行われたため佐藤反動政府は追い落とされ、田中政府が出現しました。これは、日本人民の闘争の結果だと思います。われわれは、日本人民の闘争を高く評価し、それを全面的に支持します。日本人民の闘争は、佐藤内閣を退陣させたことにのみ意義があるのではなく、日本政府に自主の道を進ませるうえで、非常に大きな意義があると思います。これは、たいへんよいことだと思います。最近、中日会談が行われ、中日両国間に共同声明が発表されましたが、この共同声明はよいものだと思います。このたび、中日両国が国交の正常化を実現したことは、アジア平和のために大きく寄与するものと思います。日本人民は、朝鮮人民との親善・友好関係を結ぶためのたたかいも積極的に展開しました。その結果、現在両国間には往来が始まっており、この過程を通じて相互間の理解をいっそう深めており、経済交流もいっそう発展する見通しがあります。このことも情勢を人民の側に有利にかえ、緊張緩和に貢献したと思います。………総体的にみて、昨年、アジア情勢はアジアの人民に有利に発展し、アメリカ帝国主義はアジアで大きな失敗をなめたといえます。アメリカ帝国主義は、日本を意のままに翻弄できなくなりました。もちろん、米日間の従属的同盟関係は残っていますが、日本はアメリカ帝国主義の統制から抜け出そうとしています。アメリカ帝国主義はまた、中国に対する封じ込め政策を放棄せざるをえなくなり、その結果、中国の国際的威信はいっそう高まりました。これらのことは、アジア人民によい結果をもたらすものであって、悪い結果をもたらすものとは考えられません。アメリカ帝国主義者は、ベトナムに対し爆撃を強化したり、いろいろな方法で脅迫したりしてみたけれども、ベトナム人民は屈服したのではなく、かえって闘争をいっそう力強く繰り広げています。これは、アメリカ帝国主義にとって、もう手のうちようがないことを物語っています。アジアではアジア人が主人となるべきであって、アメリカ帝国主義者に主人顔をさせてはなりません。アジアに足場を持っているアメリカ帝国主義勢力をすっかり追い出さなければなりません。このためには、もちろん今後、力強い闘争を繰り広げなければなりません。現在、一つ明白に言えることは、アジア人民の自覚と闘争精神が強く、アジア人民がアメリカ帝国主義の支配を受けたがらないということです。 一口に言って、今後アジアの情勢は、アジア人同士で平和に、幸せに暮らせるような方向へ発展するであろうし、自由と解放、民族独立と平和のためにたたかうアジア人民の側にますます有利に変わっていくものと考えます」。
 主席は祖国統一問題に関する質問には次のように答えた。「南北共同声明は、もちろんわれわれの主張した3大原則に基づいて発表されました。しかし、それが発表されたからといって、すべての問題が解決されたわけではありません。ただ、閉ざされていた扉を開き、はじめて互いに会ってあいさつを交わしたにすぎず、今後の討議のための原則を決めておいたにすぎないのです。今南朝鮮の為政者は、南北会談を開いておきながら、いろいろ不当な行為を行っています。彼らは、われわれが『南進』するおそれがあるといって『非常事態』を宣言しましたが、平和的に問題を解決するという南北共同声明を発表したのちにも、それを取り消していません。彼らは『非常事態』を取り消していないばかりでなく、共産党の言うことは信じられないだの、これから様子をみなければならないだのといって、共同声明の諸事項を履行していません。彼らは、われわれの言葉を信じられないといっていますが、それならわれわれにどうせよというのでしょうか。われわれが武装を解除して、それをおさめろとでもいうのでしょうか。それはあまりにも理不尽な要求です。われわれも、そのようにすることを彼らに要求していません。平和的に解決しようという約束をしたなら、『非常事態』も取り消し、一連の反応を示さなければならないはずであるのに、彼らは共産党の言うことは信用できないから、『非常事態』を取り消すことはできないし、『反共法』も取り消すことはできないといっており、平和統一に関する政治協商も行えないと拒んで、いろいろと正しくない行動を続けています。南朝鮮の為政者は、外部勢力の干渉を受けることなく、統一を実現しようという共同声明を発表しておきながら、国連は外部勢力でないといっています。
 今、アメリカ帝国主義者は自分の軍隊を南朝鮮から撤退させないための口実を見つけようとしていますが、これが、わが国の統一問題を解決するうえでのもっとも重要な障害物です。アメリカ帝国主義者は、南北会談を歓迎すると言明しておきながら、しばらくしてまた、南朝鮮に引き続き兵器を提供するつもりだとか、南朝鮮から撤退しないなどといっています。結局は、アメリカ帝国主義者とそれに追従する反動勢力がわが国の統一を妨害しているのです。南北共同声明が発表されたのち、多くの人が祖国統一に期待を寄せています。ところが、今一部の反動層は、人民のこの念願が実現されることを妨げながら、平和統一は不可能だといっており、一部の人は、南北が民族的に団結するということは不可能だといっています。問題は、今外部勢力とその忠僕が南北の対話を妨害しているところにあります。外部勢力というのは、アメリカ帝国主義者であり、日本の一部の反動階層もこれに属すると言えるでしょう。基本はアメリカ帝国主義者です。彼らは、口先では南北の対話を支持すると言っていますが、実際には妨害しています。アジア人民と全世界の人民が、力を合わせてアメリカ帝国主義に圧力を加えなければならないと思います。アメリカ帝国主義者は中国とも関係を改善すると言っており、ソ連とも関係を改善すると言いながら、なんのためにわが国土の半分を占める南朝鮮では、自己の軍事基地を維持しようとするのでしょうか。彼らは、われわれが攻めていきはしないかと恐れて南朝鮮を『保護』するために来ていると言いますが、われわれが平和的に祖国の統一を実現すると言っている以上、なんのためにそこに居座ろうとするのでしょうか。彼らは、国連でも朝鮮問題を討議することを頭から一年間延期しようと主張しました。われわれは、なんのために朝鮮問題の討議を延期するのか、南北の朝鮮人が対話を始めたのだから、朝鮮人同士を立派に団結させるため、朝鮮の統一に妨げとなるあらゆる要素を取り除くべきではないか、そうしてこそ、朝鮮の統一を助けることになるのではないか、と主張しました。こうした意味から、アルジェリアの案が提出されたのですが、アメリカの妨害によってこれは拒否されました。
 今回の国連総会では、多くの国がわれわれに助力するためにアルジェリアの案を支持しました。われわれは、われわれの立場を支持して大いに努力してくれた国々に感謝しています。南朝鮮の代表は国連に行って自由に活動できるが、われわれの代表はそこへ行って活動することができません。国連総会で、朝鮮問題の討議が一年間延期されたので、朝鮮の統一はそれだけいっそう妨げられることになります。問題は、アメリカ帝国主義者が主動者となって妨害策動を行っているところにあります。
一国内に外国の軍隊が来て占領している状況のもとで、自由な統一を実現することができないのは明白なことです。アメリカ帝国主義者は、われわれが南朝鮮を侵略するおそれがあるので『保護』していると言っていますが、われわれが平和的に統一しようと言うのに、そこに引き続き居座ろうとするのはなんのためでしょうか。彼らは、侵略的な野心をそのままさらけ出しています。侵略的な野心は帝国主義の本性です。われわれ朝鮮人がアメリカ帝国主義に積極的に反対して立ち上がっているのは、理由のないことではありません。アメリカ帝国主義がわが国の統一を妨害し、南朝鮮を引き続き占領しようとしているのに、われわれが彼らに好意的な態度を示すことはできないではありませんか。妨害する勢力さえなければ、朝鮮人同士で共通点を見つけ出すことができると考えます。もちろん、南北の間に体制上の違いがあり、その他、いろいろな問題がありますが、われわれは一つの民族ですから共通点を見出し、民族の団結をなし遂げることができると思います。『毎日新聞』の記者たちにも話しましたが、われわれは、今すぐ統一を実現することができないならば、現在の体制をそのままにして、連邦制を実施しようと提議しました。わたしは、日本人民を含むアジア諸国の人民が団結して、朝鮮の統一を助けるために努力してくれるよう希望します。一つの民族をむりやりに二つに引き裂くことはできません。わが朝鮮人民は、言葉や文字も同じであり、長い伝統を持っている単一民族です。このような民族を無理に分裂させ二つにすることはできないではありませんか。われわれは今苦痛をなめていますが、これはもちろん心痛のいたりであります。われわれは団結して、統一を実現するために力強くたたかわなければならないと考えます。
現在、南朝鮮為政者の方針は、遅延戦術をとることであります。彼らは、一日でも余計に命をつなぎとめようとしているのです。
われわれが祖国統一の3大原則を打ち出したので、彼らには不当な行動をとる口実がなくなりました。それで今、彼らは国連での朝鮮問題の討議を延期させる策動をしており、さまざまな奇弁を並べ立てています。たとえ彼らが、今年、国連での朝鮮問題の討議をさらに1年間延期させたとはいえ、それが長続きするはずはないと考えます。人民を長い間欺くことはできません。歴史は人民を欺くことを許しません。人民は自覚し、闘争はますます高まることでしょう。われわれが得た資料によると、最近、南朝鮮の野党の一部の人士は、南北共同声明を支持する、連邦制を受け入れる必要がある、南北の諸政党、大衆団体の政治協商を実現すべきだと言っています。
 今日南朝鮮人民の間では、統一に対する世論がますます高まっています。南朝鮮では弾圧が厳しいので、このようなことを新聞に発表することができません。日本の言論界が、南朝鮮の人民と野党人士の正当な声を発表してくれるのもよいと思います。南朝鮮では統一を妨げる反動勢力の弾圧がひどく、彼らの内部も複雑なので、ああだの、こうだのと言っていますが、人民はどれが正しいのかをよく知っています。南朝鮮には、一つの民族が永遠に分裂し、一つの国家が二つに分断されることを望む勢力はきわめて少なく、多くの人は、どのような方法でも統一をしなければならないと言っています。それゆえ、時間は多少かかるかも知れませんが、希望を持つことができます。南朝鮮の為政者は、誹謗中傷しないことを自分からさきに提案しておきながらそれに違反したので、われわれは今度『毎日新聞』記者との談話でそれに言及したところ、最近、李厚洛(リフラク)の名で、統一に妨げとなるようなことを言わないでほしいと南朝鮮の言論界に依頼する『書簡』を発表しました。これがまやかしなのかなんなのかはわかりません。もし、これが本心であるとすれば、われわれも好意を持って対応するつもりです。かつては南北間でなんらの接触もできませんでしたが、今は赤十字会談を通しても接触し、調節委員会を通しても接触を行っています。これは、過去に比べてよい点であります。このように接触するなかで、共通点を見出すことができると思います」。
 主席はついで朝日両国間の関係問題について次のように語った。
 「われわれは、日本人民との関係でこの1年間に大きな前進がもたらされたと考えます。今、朝日両国人民の間の関係は好ましく発展しています。われわれは、田中政府が平和共存の5原則に基づいて社会主義諸国との関係を結んでいることからおして、今後、わが国に対しても悪く接するとは考えません。田中内閣は現在、わが国との人々の往来も許可しており、最近にはわが国の学者も入国させました。聞くところによると、わが国の記者代表団を招くとも言っており、今後技術者も往来できるだろうと言っています。このように田中内閣がかつての佐藤内閣のときのわが国に対する敵視政策を緩和するのは非常によいことだと考えます。今日、『毎日新聞』『朝日新聞』をはじめ日本の言論界でも、朝鮮と日本との関係問題を再検討する必要があるのではないかと言っています。とくに、わが国に対する日本人民の理解が次第に深まっています。このような諸点からして、われわれは、今後両国間の関係がいっそう緊密になるものと予測することができます。われわれは、日本政府が真にアジア平和のために努力するなら、最小限、わが国の統一に妨げにならないような政策をとるべきだと考えており、われわれは、日本政府がそうすることを希望しています。
 日本政府がこのようにしようとすれば、当然、朝鮮半島の南と北に対して一辺倒政策をとろうとせず、いかなる侵略的性格も持たない等距離政策をとらなければなりません。そうして、わが国の統一の促進に力ぞえとなるようにすべきだと思います。
われわれは、朝日両国の間に貿易関係を発展させるからといって、わが国が日本の原料供給基地や商品市場になるのではないかと憂慮するものではありません。わが国は自主的な国であり、自立的経済を持っている国であり、自らの工業の基礎を持っているため、わが国が絶対に外国の原料供給基地や商品市場になるようなことはないと、われわれは確信しています。もちろん、われわれは一部の原料を日本に売ることもできます。だからといって、わが国が日本の原料供給基地になるわけではありません。わが国には鉄鉱石が豊富ですが、それを日本に多少売るからといって、わが国が日本の原料供給基地になるとは言えないではありませんか。自主性と自立性を持たない国であれば、国の原料供給基地に転落することもあるでしょう。しかし、われわれは自主性と自立的経済を持っているので、そのようにはなりえません。われわれはそういったことを憂慮していません。反対に、われわれは平等と互恵の原則で日本と貿易を発展させるのが両国人民の利益に合致し、有益であると考えます。われわれは、日本当局が貿易をしようと言えば、それに応ずる用意があります。われわれは、朝日両国間の経済交流を通じて日本からなにか大きな恩恵を受けられるものとは期待していません。しかしわれわれは、朝日両国の間に互恵の原則に立って、いくらでも経済交流を行うことができるのではないかと考えています。
 すべての交流は平等と互恵の原則に基づいて行われるべきであり、侵略的な方法で行われてはなりません。われわれは他の資本主義諸国とも貿易を行っていますが、それは、互恵の原則に基づいています。われわれは、われわれの自立性を奪われるようなことはありえないと考えます。しかし、南朝鮮ではこれと違う正反対の現象が起こっています。南朝鮮では、日本の工場を導入して共同で経営するか、またはその経営権を日本側に引き渡す形式で経済交流を行っていますが、これは従属的な経済交流とみなすべきものです。われわれはこういうことを許しません。われわれは日本からプラント輸入をする場合にも、その代価を支払うでしょう。われわれは、日本と平等な立場で経済交流を行う考えです。われわれは日本人がわが国に来て工業経営権や所有権を持つことを許さないし、また、日本から長期借款のようなものを受けることも望みません。われわれは国際貿易の原則に基づいて貿易をしようと考えています。あなたは、日本と南朝鮮の間に『日韓条約』があっても、朝鮮が日本と国交を結ぶことができるだろうかと質問しましたが、われわれは、『韓日条約』をそのままにして日本と国交を結ぼうと言ったことはありません。『韓日条約』のうちでいちばん悪いのは三番目の条項です。それには、朝鮮半島における合法政府は『大韓民国』であるとしていますが、これはわが国に対する干渉です。
 美濃部知事がわが国に来たとき、わたしは『日韓条約』を承認できないと言いました。日本政府が『大韓民国政府』を朝鮮半島における唯一の合法『政府』だと言っているのは、本の対米追随政策によるものとみることもできるし、また、日本反動政権のわれわれに対する敵視政策から出たものとみることもできます。それゆえ『日韓条約』をそのままにしておく条件のもとでは、日本がわれわれに平等に接しているとみることはできません。それを無効にするか、あるいは取り消すか、なんらかの方策がなければならないと考えます。これにはいろいろと問題があります。たとえば、『大韓民国』が朝鮮半島における唯一の『政府』だという
『国連の決定』を取り消すならば、『韓日条約』はおのずと取り消されることになるでしょう。というのは、『韓日条約』が『国連の決議』を根拠にあげているからです。われわれはまだ、日本政府と国交を樹立しようということを提起していません。われわれは、哀願外交をするつもりはありません。われわれは、日本政府がわが国と国交を樹立したければするし、したくなければしなくてもよいというのです。むろん、両国間に国交を樹立すればなおよいことです。もし、日本が朝鮮民主主義人民共和国との国交を正常化すれば、『韓日条約』の三番目の条項は無効になったものとみることができるでしょう。この問題に関連しては多くの問題が提起されます。われわれは、この問題をまだ日本政府に正式に提起していません。われわれは、われわれに対する日本政府の態度を検討しながら、朝日関係問題を解決していくつもりです」。
 長時間にわたる主席の回答は終わり、別れる時間になった。多忙な中で貴重な時間をさき懇切な回答をいただいたとして恐縮する編集局長に、主席はほほえんで言った。
 「わたしは、あなたがわが国を訪問された機会に、あなたと長時間話すことができたことを喜ばしく思います。こうして意見が交わせたことをうれしく思います」。