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見出し特別供覧「金日成主席と日本」    87.明々白々な回答   
日)

87.明々白々な回答

 1975年11月26日、金日成主席は『毎日新聞』取締役・編集局長の五味三男氏一行と会見した。主席は、お元気ですか、平壌と東京の気候の差はどれほどでしょうか、朝鮮はこれから寒くなります、と挨拶したあと、こう言った。
 「わたしは、あなたがたのわが国訪問に感謝するとともに、あなたがたを熱烈に歓迎します。もう少し早くあなたがたにお会いすべきでしたが、その間党中央委員会総会や急を要する仕事が重なって遅くなりました。ご了承ください。わが国に滞在する間不便な点はありませんでしたか。われわれはまだサービス施設を完備していません。われわれはまず工場、学校、住宅を建てているので、接待用の便益サービス施設を十分にととのえていません。今後、基本的な建設を終えてから、おいおい便益サービス施設も完備することになるでしょう」。
 恐縮して、朝鮮を訪れていろいろとよい印象を受けたという編集局長の言葉に主席は、韓徳銖(ハンドクス)総聯議長からあなたがたについての紹介状をもらった、そこには、総聯があなたがたからいろいろと援助を受けていると書いてあったとして、こう続けた。
 「わたしは、日本で在日朝鮮同胞の民主主義的民族権利の擁護と祖国統一の事業に大きく貢献しているあなたがたに謝意を表します。わたしはあなたがたに今日初めてお会いしますが、旧知の間柄のような親しみを感じます」。
 この好意にみちた言葉に感激する一行を見回して、主席は提起された質問に答え、朝日関係問題については次のように述べた。
 「日本は朝鮮の隣国です。朝鮮人民と日本人民は現在も親しくしていますが、今後は友好関係をいっそう発展させなければならないと思います。われわれは日本人民との友好を願っており、それをさらに発展させることを一貫して主張しています。われわれはアジア人同士が平和に暮らすことを願い、とりわけ隣国とむつまじく過ごすことを望んでいます。しかし、日本の反動層は朝鮮の統一を助けようとするのではなく、これを妨げています。これはじつに遺憾なことです。われわれは、当然日本が朝鮮の平和統一を心から助けるべきだと思います。あなたがたは、日本人に対する率直な気持を語ってくれるようにと言いましたが、一口に言えば、われわれは日本人民に対してよい感情を持っています。朝鮮人民に不幸をもたらした過去のことは、すべて日本の一部の反動層のしたことであって、決して日本人民のしたことではありません。それゆえわれわれは、日本人民がなにかの代表団または個人としてわが国に来る場合、いつも親切に迎え入れています。
 現在日本人民のなかで、わが国についてよく理解していない一部の人を除いてはみな朝鮮人民の正義の闘争を積極的に支持しています。したがってわれわれは、日本人民に対して好感を持っており、日本人民との友好・団結を強めるために努力しています。今後、朝鮮と日本両国人民の友好・団結はさらに強化発展することでしょう。あなたがたは『松生丸』事件について質問しましたが、この問題については朝鮮中央通信社の報道が発表されているので、よく理解できたと思います。率直に言ってわが国の沿岸警備艇は、その船が日本の漁船だとは知らず、また日本の漁船が鴨緑(アムロク)江の河口にまではいってこようとは思わなかったのです。
わが国の沿岸警備艇は、その船を南朝鮮かアメリカのスパイ船とみなして射撃したのです。もしもわが国の沿岸警備艇が、その船を日本の漁船だと知っていたなら、たとえわが国の領海を侵犯したとはいえ、よくいい聞かせて帰すなり、あるいは国の法規にてらして問題をおだやかに解決したはずです。そのような前例はいくらでもあります。日本の漁船がわが国の領海に不法侵入したことがたびたびありましたが、われわれはそのつど船員を厚くもてなして帰しはしても、射撃を加えたことはありません。日本の漁船が朝鮮東海で台風にあい保護を求めてきたときも、われわれは彼らにあらゆる便宜と安全をはかってやりました。これまで日本の漁船がわが国の領海に不法侵入したからといって、射撃を加えたことは一度もありません。
 領海に侵入した日本の漁船を撃って、われわれに得になることがあるでしょうか。もしそのような事件が起これば、それはわれわれ両国人民間の団結をそこなう結果しかもたらしません。ですからわれわれは、今度の事件をたいへん不幸な出来事だと思っています。今度の不幸な事件は『松生丸』の過失によって生じたものです。『松生丸』がわが国の領海を侵し、われわれの沿岸警備艇が再三にわたって停船信号と威嚇射撃を行ったにもかかわらず、それに応じようとせず、逃走したために事件が生じたのです。したがって『松生丸』の船員たちは、その過ちを認めなければなりません。日本では今度の事件について、領海を侵犯したにしても銃撃するのは防衛の範囲をこえているという意見があるそうですが、われわれは領海を侵したのが日本の漁船であることを知らず、またその船が停船信号を無視して逃走したので、敵のスパイ船だと思って射撃を加えたもので、わが方にはなんの責任もないと認めます。責任はわれわれの側にあるのではなく、逆に『松生丸』がわが国の領海を侵犯したことにあります。しかしわれわれは、今度の事件が不幸な出来事であるだけに、船と乗組員をただちに送りかえし、負傷者は完治するまで治療し、死亡者の遺族に対しては弔慰金まで送りました。これはわれわれが日本人民との友好・団結をはかるためであって、決してわれわれの非をわびるためではありません。今日本の反動層は、『松生丸』事件を口実に朝鮮と日本両国人民の友好・団結を破壊しようと策動しています。日本当局は、わが国に対するこのような非友好的で敵対的な行為を中止すべきであります。
 『松生丸』事件については、すでに過去の出来事なので、これ以上長く話そうとは思いません。 今後『松生丸』事件のような不幸な事件が再び起こらないようにするには、なによりもまず、日本の漁船がわが国の領海を侵犯することのないようにすることです。今朝鮮半島の情勢は緊張しています。わが国は南北に分断されており、アメリカ帝国主義者と南朝鮮の反動層は、漁民に仕立ててスパイをわれわれの領海に送りこみ、北半部に対するスパイ活動をたえず行っています。ですから日本の漁民に、わが国のこのような情勢を十分に知らせる必要があると思います。日本の漁民がわが国の近海に来て魚を捕るうちに、ときには領海を侵犯する場合もありうるでしょう。そういう場合は、逃走せずにわが方の取締りにすなおに応じるべきです。スパイ行為をはたらく目的でわが国の領海にはいってきたのでなければ、逃走する必要などないでしょう。わが国の領海を侵したとしても、取締りに応じ、領海だと知らずにはいってきたと謝罪すれば、関係当局で取り調べたうえで送りかえすでしょうし、損傷を与えるようなことはしないでしょう。わたしは、両国間で今度の『松生丸』事件のような不幸な出来事が再び発生しないよう希望し、互いに注意すべきだと思います」。
 実に率直かつ明白な説明であった。日本漁船が犯した過ちと朝鮮側の対応処置について、明確にけじめをつけて話す主席の説明には疑義をはさむ余地がなかった。