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見出し特別供覧 「金日成主席と日本」 9.祖国に帰るのは当然の権利   
日)

 1959年元旦、金日成主席は新年の祝賀宴で演説を行った。主席は、前年の社会主義建設における成果を誇り高く総括し、新年の課題について言及した後、在日同胞の帰国実現問題に触れて次のように述べた。
 「在日朝鮮同胞は祖国への帰国実現の一念に燃えて闘争を続けていますが、日本政府の非人道的な迫害と妨害策動によっていまなお帰国が実現せず、異国の困難な状況下で新年を迎えています」。 なんぴとも、またいかなる力も、生きる道を求めて祖国への帰国を希望する彼らの正当な権利と人道的要求を阻むことはできないとして、主席は語を継いだ。
 「わたしは、日本で苦労しているすべての在日朝鮮同胞に新年の祝賀を送り、帰国を希望する彼らの念願が早急に実現することを期待します」。
 帰国を妨げられ日本で苦労している在日全同胞の帰国を必ずや実現させなければならないとする主席の言葉は在日朝鮮人を大きく励ました。長崎県大村収容所に抑留されている同胞たちは、1959年の新年を迎えて、夢にも忘れられない祖国に挨拶を送る、という手紙を朝鮮へ送った。その手紙で彼らは、岸政府の非人道的かつ不当な措置によって大村収容所に抑留され、虐待と蔑視を受けている悲惨な境遇を訴えた。自分たちが生まれた祖国に帰れない胸の痛みを切々と吐露した手紙は、朝鮮民族の悲劇の歴史を反映するものであった。
 人道的原則と国際法に反する岸政府の非道な仕打ちに全朝鮮人民が怒り、正義を愛する世界の人民も糾弾の声を上げた。1959年1月1日付け『人民日報』は、在日朝鮮人の帰国問題に関する朝鮮外務省の声明を支持して、「在日朝鮮人の帰国を妨害する岸政府を糾弾する」と題する論説を掲載し、藤山外相が在日朝鮮人の帰国問題は「韓日会談」で政治的に解決されるべきだと公言したことを糾弾するとともに、岸政府は警察を駆り立てて帰国を希望する在日朝鮮人を威嚇していると暴露した。同じ頃、ソ連のモスクワ放送も岸政府の非人道的行為を鋭く批判した。
 岸政府の非道な言動は日本国内でも大きく非難された。大多数の日本人は在日朝鮮人の境遇に同情し、彼らの帰国要求運動を積極的に支持した。こうした状況の中、日朝協会理事長畑中政春氏が平壌を訪れた。1959年1月10日、金日成主席は多忙ななかでも畑中氏と会見した。主席は、畑中氏が世界の平和に尽力していることを高く評価し、あわせて朝鮮人民と日本人民の親善強化に努めてきたことに謝意を表した後、次のように述べた。
 「今、あなたのような多くの平和愛好の人士が活躍しているのは非常によいことです。わたしは、あなたのような平和愛好の人士の隊列が拡大されることを望むものです。朝日両国人民は、相互に往来し親善をはかるべきです。日本はわが国の隣邦です。朝日両国人民は隣同士の間柄ですから睦まじく暮らし、反目などしてはなりません。過去に朝鮮人民が反対したのは日本帝国主義者であって、日本人民ではありません。今も朝鮮人民は、日本軍国主義者は敵と見なしますが、日本人民を敵視していません」。
 主席は、これまで日朝協会は朝日両国間の国交正常化のために多大の努力を重ねてきたと再度高く評価した。畑中氏は恐縮し、日朝間に国交が樹立されていないことを申し訳なく思うと述べた。主席は、気を使うことはない、両国間の国交問題は時機が到来すれば解決されるだろう、日本政府がわが国に対して非友好的態度をとっている現状では両国間の国交樹立は不可能であり、またこうした状況のもとで国交が樹立されたとしてもそれは無意味だとして、こう続けた。
 「朝鮮と日本との国交樹立は急を要する問題ではありません。重要なのは両国人民間の親善関係を発展させることです。国交があれば人民間の親善関係が結ばれ、それがなければ親善関係が結ばれないというものではありません。もちろん、国交も樹立され、人民間の親善関係も深まれば、それに越したことはありません。しかし、国交がなくても人民間の親善ははかることができます。今後、国交関係のいかんにかかわりなく、朝日両国人民は相互に往来し、文化も交流すべきです。日朝協会がこのための努力を続けるよう望みます。平和を守るための朝鮮人民と日本人民の闘争は密接なつながりをもっています。したがって両国人民は、平和のための闘争において支持し合い、連帯すべきです」。
 主席は、日本軍国主義の復活はアジア全般の平和と安全にとって脅威となるだけに、朝鮮人民は日本軍国主義の復活に反対する日本人民の闘争を積極的に支持する、また、「日米安全保障条約」の改悪に反対する日本人民のたたかいを極力支持する、今後、「日米安全保障条約」の改悪と日本軍国主義の復活に反対する日本人民のたたかいがさらに盛り上がるものと確信する、と言った。主席の話しぶりは、同じ朝鮮人を相手にしているような親しみのこもったものであった。主席は、国内外の情勢についても平明に語った。
 朝日両国間の貿易問題については、朝鮮と日本は距離も近いので必要な商品を交易することは両国人民にとって有益だろうとし、また、「韓日会談」は侵略者と売国者間の密談であり、アメリカ帝国主義者が日本と李承晩、蒋介石のような傀儡を集めて「3国軍事同盟」をつくりあげようとするのは、アジア人同士を戦わせてアジア侵略の野望をたやすく実現し、さらには社会主義諸国に対する侵略の野望を実現しようと策するものだと強調した。最後に主席は、在日同胞の帰国問題に言及した。
 「在日朝鮮同胞が祖国に帰るためにたたかうのは、まったく正当なことであります。また日朝協会をはじめ日本の各社会団体と各階層人民が、在日朝鮮同胞の帰国運動を支援しているのも当然なことだと思います。わたしはまず、帰国実現をめざす在日朝鮮同胞のたたかいを支援している日朝協会をはじめ、日本の各社会団体と各階層の人民に謝意を表し、あなたが帰国してわれわれのあいさつを伝えてくれるよう望みます」。
 主席の言葉の端々から熱い民族愛、同胞愛を感じとり、畑中氏は深い感動を覚えた。「朝鮮人民は単一民族として強い民族愛をもっています。朝鮮人民が日本帝国主義者に国を奪われたときは、民族が離散してもやむをえなかったのですが、政権を握った今日、同胞が海外で民族的な蔑視と迫害を受けているのを座視することはできません。現在、日本に在住する朝鮮人の生活は困窮状態にあります。日本政府は在日同胞が朝鮮民族だということで、彼らになんらの生活条件も保障していません。われわれは、国内人民の生活が向上すればするほど、同胞が海外で苦労していることにいっそう心を痛めており、たとえ一膳の食を分け合うようなことがあっても、彼らが一日も早く帰国することを望んでいます」。
 聞く人の胸を打たずにはおかない真情のこもった言葉であった。
 「われわれは在日同胞のみならず、南朝鮮で苦痛にあえぐ兄弟たちをも、傍観してはいません。現在、南朝鮮には400余万の失業者と数十万の孤児がいます。最近共和国内閣では、南朝鮮の失業者と孤児に救済物資を送り、寄るべのない孤児をすべて引きとって養育する決定を採択し、それを南朝鮮傀儡政府に通達しました。
しかし、彼らはこれに対してなんらの回答もよこしていません。われわれは同胞愛に基づいて、在日同胞を共和国に帰国させるよう日本政府に要求しました。しかし日本政府はまだこれに応じていません。現在、朝日両国間に国交はありませんが、日本政府が朝鮮人を祖国へ帰すのに、難点はないと思います。日本政府は在日朝鮮同胞を祖国に帰すべき責任を負っています」 。
 日本政府の迫害を受けている在日同胞の姿を思い浮かべるかのようにしみじみとした口調で語る主席の言葉に、畑中氏は胸がしめつけられる思いがした。主席は、在日朝鮮同胞が祖国に帰るのは誰も奪うことのできない彼らの当然の民族的権利である、したがって日本政府は早急に在日同胞を祖国に帰さなければならないとし、われわれは帰国を希望する在日同胞をすべて受け入れる準備ができていると言った。
 「住宅建設も進んでいるので、帰国する同胞に住宅条件を十分に保障することができます。先生もごらんになったと思いますが、農村が復興して人民の食糧問題が完全に解決し、工場も復興して消費物資に対する人民の需要を基本的に満たせるようになりました。したがって、数十万の在日同胞が帰国しても、国が彼らの生活を保障できない状態ではありません。就業問題も心配ありません。現在、わが国の工場と農村では労働力の不足に悩んでいます。在日同胞が帰国したら、すべての人に能力と体質に合う適切な職場を保障するでありましょう。子女の就学も問題ありません。わが国ではすでに全般的中等義務教育制が実施され、すべての新しい世代が無料で中等義務教育を受けています。われわれは学校を増設しなくても、在日同胞の子女数十万を受け入れて就学させることができます。一言で言って、在日同胞が帰国して安定した職業を得て幸福な新しい生活を享受し、子女を学校に入れられるよう、すべての条件を保障する準備ができています。したがってわれわれには、在日同胞の帰国にあたって少しも問題になることはありません」。
 主席は、在日朝鮮同胞の帰国実現問題は日本政府の誠意いかんにかかっている、日本政府が人道的立場に立って在日朝鮮同胞を祖国に帰すために努力するならば、彼らの帰国問題は容易に解決されるだろう、と重ねて強調した。そして、日本政府は在日朝鮮同胞の帰国を認めるだけでなく、彼らが安全に帰国できるよう必要な措置を講じるべきである、帰国する在日同胞の安全について日本の領海では日本政府が責任をとり、共和国の領海に入ってからは共和国政府が責任を負うべきであると述べた。
 主席は、われわれは日本に在住する朝鮮同胞が祖国に自由に往来できるようになるべきだと考えている、現在、日本政府は在日朝鮮同胞の祖国への自由往来を許可していないが、これも朝鮮民族を敵視する態度だ、と語気を強めた。在日朝鮮同胞の帰国を実現させるためには日本人民の支持が重要だとして、主席は、日本人民は彼らの帰国運動を極力支持、共鳴し、その帰国を実現させるべきだと言った。熱心に耳を傾けている畑中氏に親しみのこもる眼差しを向けた主席は、こう言葉を継いだ。
 「朝鮮人民は先生に大きな期待をかけています。わたしは先生が在日同胞の帰国実現のため引き続き努力されるよう望みます。先生は人民のために努力しています。人民のために働く人は人民から評価されます。先生が人民のためにさらに奮闘するよう望みます。………
 わたしは、日本にあなたのような、われわれの支持者を多くもっていることをたいへんうれしく思っています。わたしがあなと談話を交わしているのは、日本人民と対話しているのも同然です。われわれは日本に行けませんが、あなたはいつでもわが国を訪問できます。われわれは先生がしばしばわが国を訪ねるよう希望し、わが国人民とあなたとの関係がさらに密接になることを望みます。あなたはわが国の社会主義建設が成功裏に進むことを願ってくれましたが、われわれは祖国の平和的統一と社会主義建設を早めることによって、あなたの念願にこたえるでありましょう」 。
 主席との会談後、畑中政春氏は記者会見にのぞんだ。「岸政府の不当な措置は、広範な日本人民の反対にあい、糾弾を受けているだけでなく、岸が所属している自民党内でも反対を招いている。朝鮮人民との友好関係を一段と発展させるという日本人民の願いは日ごとに高まっている。日本人民は、朝鮮民主主義人民共和国に対し非友好的な態度をとり、在日朝鮮公民の帰国実現を妨害する岸政府の不当かつ非人道的な措置を排撃しており、在日朝鮮公民の帰国運動を極力支持し、現在、その実現に向けてあらゆる方法を講じて協力運動を力強く展開している」。
 氏は、帰国すれば、日朝協会理事長として在日朝鮮公民の帰国実現のために積極的にたたかう決心であるとして、日本の世論をさらに喚起し、在日朝鮮公民の帰国実現に協力する大衆運動を展開するとともに、国会でもこの運動を積極化し、在日朝鮮公民の帰国の念願を一日も早く実現するために尽力すると力をこめて語った。