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ベトナム憲法改正と政治の自由 (2013年3月15日)

 ベトナムの憲法改正をめぐる動きが注目されている。「ミャンマーが曲がりなりにも民主化に向かっている中、2013年はベトナムの民主化、人権問題が焦点になるのではないか」との声も聞くようになった。いまベトナムでは民主化への大きなステップになる多党制導入の求める意見が噴出している。
 ベトナムの経済成長と社会の安定に寄与したのは、社会主義を堅持しながら市場経済化を目指した「ドイモイ(刷新)政策」の成功である。それまでの重工業優先政策を見直して生活財の生産拡大を強調、国際経済の積極参入がうたわれたわけだ。このドイモイの導入により、ベトナムは2020年までに「工業国入り」を目標に掲げるまでになった。
 ドイモイがスタートしたのは、1986年。この政策を支えてきたのが、古い東欧・ソ連型の1980年憲法を刷新した1992年の改正されたいまの憲法だった。
 改正から20年余り。ベトナムは1995年に米国と関係正常化を果たし、2007年、世界貿易機関(WTO)にも加盟した。内外ともベトナム社会を取り巻く状況は大きく変わったのだ。その社会変化を受けて、論議されているのが、「ベトナム共産党の指導的役割」に関する憲法第4条である。「共産党は国家、社会を指導する勢力」と規定し、1992年以降も1党独裁体制を正当化してきた。ベトナム国会は、1月に改正草案を公表したものの1党独裁体制に関しては、大幅な改正は盛り込まれなかった。
 こうした矢先に、元閣僚・国会議員や知識人ら72人が署名した、一党支配の廃止を求める意見書が発表された。報道によると、意見書は
 @複数政党制による民主的選挙の実施
 A土地の私有権を認める
 B人権の尊重――などが盛り込まれた。

ベトナム国会議事堂
 これに対し、ベトナム当局側は「党創立からこの間、ベトナム共産党は労働者階級の利益のためだけでなく、人民と民族の利益のために尽くしてきた。第4条のベトナム共産党の指導的役割は、国の発展状況においても必要である」との見解だ。意見書について、グエン・フー・チョン党書記長ら指導部は「複数政党制を求めるのは政治的堕落だ。反体制的な扇動を防がなければならない」との姿勢で、書記長の発言を批判した国営新聞の記者が解雇されたという。
 
 憲法論議は、今後も続くが、改正草案への意見提出の期間はまもなく終わり、11月の国会での新憲法採択目指すといいわれているが、当局のこれまでの姿勢から見て、署名した知識人らへの締め付けなどを通して、複数政党制など現体制の根幹に関わる部分についての譲歩はないだろう。しかし、経済が豊かになり、国際社会に開かれた国になれば「政治改革も」との声が国民の間で高まるのは当然である。ドイモイのスタート時から、早くも指導部の中に、複数政党制の導入の必要性など政治の自由化を主張する意見が出ていた。
 当時は「経済分野におけるドイモイに集中すべきである。政治分野では早過ぎる」との方針がくだされ、
「政治のドイモイ」は実現されなかった経緯がある。
 今回の署名者には、ドイモイの推進役だった故ボー・バン・キエト氏ら歴代首相の顧問を務めた学者らも含まれているという。「工業国入り」の目標は、キエト氏が首相在任中の党大会(1996年)に採択されたものである。深読みかもしれないが、改革派のキエト氏らは、この「工業国」への目標を支えるには、経済の自由に続き、いずれ、政治の自由も必要になる、と思っていたのではないか。

 





                                         







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