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マレーシア総選挙    (2013年5月2日)

選挙になると支持政党の旗が乱立する
 マレーシアの連邦下院(定数222、任期5年)の総選挙は、5月初旬に実施されることになった。ナジブ首相はようやく解散に踏み切った。勝算あっての決断、と思えるが、国民の間では50年以上も政権を独占してきた与党連合・国民戦線への不満が高まっており、与党側の苦戦が予想されている。
 マレーシアは、多民族国家でマレー系が66%を占める。中国、インド系がそれに続くが、マレー系への優遇政策(ブミプトラ政策)に対する不満は、根強い。最近の世論調査で、与党連合の支持率は45%と低迷しているのは、これに加え、アジアの長期政権に付き物の汚職や物価上昇にも批判が集まっているからだ。野党連合・人民連盟を率いるアンワル元副首相が「公正な政府を実現する。国民は国を変革する準備ができている」と述べ、政権交代に意欲を示したのもうなずける。

 こうした状況に対して、ナジブ政権も手をこまぬいてきたわけではない。首相は国民の不満を汲み取りながら、ブミプトラ政策の見直しの意向を示してきた。同政策が、経済・金融グローバル化、国際環境に合わなくなってきたからだ。たとえば、これまで企業の株式公開の際には、マレー系住民への優遇割り当てが行われてきた。こうした閉鎖性、不透明さは、外国企業、外国人の活発な経済活動・投資を阻害させる要因になる。非マレー系の不満という「内圧」だけではなく、「外圧」もナジブ首相に、政策の見直しを促したわけである。
 その一方で、ナジブ政権が行ったのは有権者をひきつけるための「ばらまき政策」である。家庭電気料金への補助金、公務員の昇給をはじめ、低所得世帯への給付金支給などを次々と打ち出した。「乗客(有権者)への口コミ」を意識したのか、タクシー運転手へのタイヤ購入用の引換券支給などきめ細かい「ばらまき」もある。野党連合も負けていない。政権交代を実現しようと大学授業料の無料化、高速道路無料化などを選挙公約に掲げているという。 マレーシアは財政赤字の状態が続いている。経済は成長が加速しているものの財政支出が増大しており、このまま「ばらまき」が広がれば財政悪化に拍車をかけることは確実だ。

 「ばらまき政策」といえばタイのタクシン政権にも見られた。当時、タクシン首相は貧困問題に力を入れ、低料金での医療、農村での一村一品運動、農民の債務返済猶予などを実施し、地方、農村、低所得層の間で支持を広げてきた。タクシン政権の場合、バンコクなどの知識層から強い批判が浴びせられたが、農村対策には一応成功を収めた、といえるかもしれない。しかし、そうした「ばらまき政策」が有権者の支持獲得につながるような土壌が、東南アジアから徐々になくなっているのが現実ではないか。中間層の増大による社会の意識変化が影響しているのだ。中間層は、富裕層とも貧困層ともいえない存在だが、それなりに豊かな生活をしている層である。家電製品などの消費が盛んで、さらに所得が伸びると良質な医療・教育を求めるようになる。レジャー支出も増える。報道によると、アジアの中間層は、2020年にかけて6億人増えて、23億人になる見通しだという。
 「ばらまき政策」を実施しても財政赤字が増えるだけで経済成長にもなかなかつながらず、選挙の際には、きまぐれな有権者(中間層)にそっぽを向かれる。この図式は、日本のケースを見てもわかるだろう。
日本経済が「失われた20年」から脱却できず、このまま停滞すれば、マレーシアは2020年に一人当たりの国民所得で日本と肩を並べる、との予測もある。「成長するアジア」では、インターネットの普及や若者、中間層の意識変化により「ばらまき効果」は薄れていくことを政治家は早く気付いた方がいい。
 





                                         







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