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外貨送金がけん引役ー変質するかフィリピン経済 (2013年6月4日)

マニラ

 最近、日本の新聞の国際面・経済面を開いて気が付くのは、フィリピンに関する記事が多くなってきたことだ。先月、台湾の漁船がフィリピンの沿岸警備隊に銃撃され、船員1人が死亡する事件が発生した。事件の現場は、
比政府が領海、台湾当局が排他的経済水域をそれぞれ主張している海域にある。台湾はフィリピンに対する制裁措置を発動し、台湾の駐比代表(大使に相当)を召還する一方、フィリピン人労働者の新規雇用を凍結した。
 尖閣諸島において中国と対立し、台湾との間では漁業問題を抱えてきただけに、日本のメディアは、この衝突を取り上げた。これが「暗のニュース」ならば、比経済の動向についてのニュースは、「明」だろう。
 「比政府が30日発表した今年1〜3月の実質国内総生産(GDP)は個人消費のけん引で7.8%成長。中国を上回り、アジアの新興国でトップの高成長となった」。これは5月31日付けの日経新聞の記事である。興味深いのは、海外で働く労働者からの外貨送金の増加が、旺盛な個人消費につながり、成長のけん引役となっている、との分析だ。

 海外で働くフィリピン人は、2010年末時点で人口の約1割に当たる950万人、その後も増え続け、現在は1000万人以上いるという。日経新聞によると、その送金額は、2012年には214億ドル(約2兆円)に達した。かつては、海外出稼ぎ者の増加は、比経済の貧しさを物語るもの、と解釈されてきた。脆弱な経済構造→職不足→海外でメイドなどの仕事を求める、という図式である。しかし、いまでは、職域はメイドだけではなく、看護士、介護士、船員や技術者ら賃金の高い業種も増えており、必ずしもそうとは言えなくなってきた。海外から送金されてくる家庭は生活に余裕が出来て、その金は消費に回り、内需に大いに
貢献しているのだ。

 また、海外出稼ぎ者・送金額の増加を支えているのは、フィリピン人の英語力である。フィリピンでは、英語が公用語になっていて人口のほとんどといっていいほど英語を話すことが出来る。米、英に次ぐ世界第3位の英語人口、という指摘もあるほどだ。現在フィリピンの人口は9600万人。その50%は25歳以下で構成されている。この語学力と若い労働力が、海外出稼ぎや欧米企業によるコールセンターの比国内への設置などにつながっている。
 かつて、政治・経済で混乱していた時に、フィリピンは、こう言われてきた。「インド、中国の2大文明のセンターから地理的に遠いフィリピンは、その文明センターのエキスを取り込むのが遅れた。自己編成がうまくいかず、社会の骨格ができる前に、スペイン、米国の植民地となり、不安定な社会構造が残る
結果となった。富裕層と庶民との間の極端な経済格差などの矛盾が解消されず、混乱を招きやすい体質を抱えている」。

 マルコス政権崩壊以降、なんらかの経済環境の好転により、やっと「停滞」を脱し「成長」を実現しても、それが長続きしなかった。タイなどほかの東南アジア諸国が、高度経済成長を成し遂げても、フィリピンだけは、その蚊帳の外に置かれていた感があった。1〜3月の「GDPの7.8%成長」が定着傾向に向かうのか。それとも「停滞」→「成長」→「停滞」というこれまでのパターンに終わってしまうのか。
「あまり知られていないが、比国は実は資源が豊富な国で、銅、ニッケル、クロムは世界でも有数な埋蔵量を持つ。石油、石炭、鉄鉱石なども豊富だ」(経済専門家)。
 南シナ海での中国や台湾との対立は、石油やガス田もからんでいる。「領有権問題」と「経済成長の持続」---この二つの問題解決能力が、比の現政権に問われている。







                                         







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