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 煙 害     (2013年6月29日)

スモッグで霞むクアラルンプール空港

 この時期、シンガポールとマレーシアの悩みの一つは「煙害」である。毎年6月ごろになると、隣国インドネシアのスマトラ島で野焼きによる森林火災が発生、その煙が海を渡り、シンガポール、マレーシアまで漂う。ジャカルタからシンガポール、マレーシアまで飛行機で飛べば、わずか2時間。この至近距離からの「煙攻め」は深刻である。
 一時、中国の大気汚染の日本への影響が心配されたが、それと同様、隣国のやっかい物である。今年は、特にひどく大気汚染指数が4段階で最も深刻な「極めて危険」に達した日もあり、経済活動への影響が懸念さえ指摘された。

 インドネシア国家災害対策庁などによると、火災はスマトラ島中部のリアウ、ジャンビ両州の計850ヘクタールの森林で発生した。シンガポール、マレーシアでは昼間でも空が白くかすみ、焦げた臭いが街を覆った。政府は国民に不要不急の外出を控えるよう呼び掛け、高齢者や病気の人には屋内にとどまるよう警告したという。
 シンガポールの半世紀の歴史をみると、この隣国・インドネシアの「濃い影」をつい感じてしまう。
1963年のマレーシア連邦の誕生の時もそうだった。マラヤ、シンガポールなど英国の旧植民地による連邦形成に対して、インドネシアのスカルノ大統領は「英国の陰謀」ととらえ、マレー半島部に攻撃部隊を上陸させた。シンガポールでも中心部で爆弾テロが起きた。さらにインドネシアは、対シンガポール貿易を禁止する措置をとった。その後、「スカルノ失脚」によって危機は遠のいたが。

 1965年にシンガポールは、分離独立するが、国民の日常生活に不可欠な水や食糧などはマレーシア、インドネシアに依存しなければならない状況は変わらない。国際貿易をするにしても両国の海域利用が必要だ。もし海洋閉鎖の事態になれば、大変である。言うならばシンガポールは、「東南アジアのクウェート」のような存在である。小国ながらクウェートは、石油に恵まれ繁栄した。隣国から妬みそねみを買いがちだった。サダム・フセイン大統領(当時)のイラク軍が侵攻した背景の一つにそれがある。
 シンガポールも同じようなものだ。突出した豊かさ。1人当たりの国民総所得が日本を超えた。「IT(情報技術)先進国」と呼ばれ、国際競争力はトップクラス。高層ビルが立ち並び、国際貿易・金融センターとして発展している。しかし、マレーシアや大国のインドネシアに隣接し、息苦しい。周辺にフセインのような人物が登場し、ちょっかいを出してくれば国難につながりかねない。そこでシンガポールが考えたのが、隣国に技術と資本を提供し、リゾート開発、産業開発などを行い周辺部に緩衝地帯の「友好ゾーン」をつくることだった。そうすれば侵略されることはまずない。
 インドネシアのビンタン島開発は、その典型だった。シンガポールから高速船で約1時間。国政府が国家プロジェクトとして投資を優遇するなど開発に力を入れており、インフラの整備が進み、リゾートホテルなどが建設されている。皮肉なことに煙害は、こうしたシンガポールの開発政策の故(ゆえ)、との指摘があることだ。リー・シェンロン首相が、インドネシアに違法な野焼きの中止を求めたのに対し、インドネシア側は、ヤシ油農園の開発のための野焼きが原因で、それには、シンガポールの企業が関与してきたと
指摘している。両国との共存関係が不可欠なシンガポールの指導者にとって「煙が目に染みる」と悠長なことを言っている場合ではない。











                                         







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