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翻訳力とノーベル賞           (2015年10月12日)







授賞式(2010年)
 今年のノーベル賞は、土壌中の微生物が作る化学物質から医薬品を発見した大村智・北里大特別栄誉教授に医学生理学賞、素粒子ニュートリノに質量があることを示す「ニュートリノ振動」を発見した業績で、梶田隆章・東大宇宙線研究所所長らに物理学賞が贈られる。科学分野で2000年以降続いている日本人の受賞ラッシュは途切れなかった。

 ノーベル賞受賞は、その国の「総合力」を示す指標の一つ、と言っていいだろう。
この時期になって思うのは「アジアの国々では、受賞者は皆無なのに、なぜ、日本が?」ということである。特に以前、新聞社のソウル特派員をしていたこともあり、韓国の「ノーベル賞反応」が気にかかる。
 日本から受賞者が出ると、日本に厳しい姿勢の韓国メディアも「なぜ韓国からは受賞者が出ないのか。日本の研究体制を見習え」といった記事が出る。
 韓国人でノーベル賞を受賞したのは平和賞の金大中・元大統領ただ一人で、科学分野の受賞者が出ない悔しさもにじみ出るのだ。
 2002年に島津製作所に勤務していた田中耕一さんが受賞した際には、朝鮮日報など韓国の大手紙は「多額の費用を投下してエリート研究者を養成したり、海外からかき集めてノーベル賞を獲得しようとしたりする我が国に比べ、日本では企業の一社員が受賞している」などと報道したのを覚えている。
 今回も両氏の連続受賞に合わせて、朝鮮日報が「日本のノーベル賞行進の秘訣」という見出しで、日本の基礎科学の歴史、その匠の精神などを称賛しながら「これからも科学系での日本の受賞は続くだろう」と指摘していた。

 日本の受賞者ラッシュを読み解くヒントになる本がある。「日本語の科学が世界を変える」(松尾義之著・筑摩選書)だ。松尾氏は「日本語の中に、科学を自由自在に理解し創造するための用語・概念・知識・思考法までもが十二分に用意されている」と指摘しながら、物理学賞を受賞した益川敏英氏の「日本語で最先端のところまで勉強できるからではないか。自国語で深く考えることができるのはすごいことだ」との意見を引用、「日本語とノーベル賞」の関係を説明している。

 日本では、科学分野を含め、外国の先進的な知識や理論がすぐに翻訳される。研究者だけではなく、一般市民も努力すれば、最先端の情報が取得できる環境にある。研究の裾野が広く、そして深い。
 アジアの国々の多くは、最初から外国語である英語から入り、慣れ親しんでいる自国語で考え、その情緒、感覚をつかむことはたやすいことではない。「翻訳力」も国力を示す指標であり、ノーベル賞受賞者を生みだす「力」ではないか、と感じる。





                                         







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