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二つの罠(わな)        (2015年9月30日)


古代ギリシャの歴史家トゥキディデス

 今秋の国際政治・外交で注目を集めたのが、中国の習近平・国家主席とオバマ米大統領との首脳会談だった。その中で、習主席が「トゥキディデスの罠(わな)」
について言及したのが目を引いた。
 「急速に台頭した勢力が既存勢力と衝突する」――古代ギリシャの歴史家トゥキディデスの指摘である。古代ギリシャを例に挙げると、台頭するアテネと覇権国スパルタの間で戦争が起きた。これを現代にあてはめれば、世界をコントロールしようとしている国は、
米国であり、急速に台頭している国は中国だ。ここに「トゥキディデスの罠」が潜む。
 その状況を認識しながら「中国とアメリカはこの罠を回避できる」――これが習主席の主張だった。習主席は「大国間に戦略的な誤りがあれば、トゥキディデスの罠を作りだしかねない」と述べ、オバマ大統領も「トゥキディデスの罠は信じない。米中には対立を管理する能力がある」と応じたという。 今回の米中首脳会談は、ローマ法王の訪米とも重なり、米国民の関心も薄く、具体的な成果にも乏しかった、と言われる。トゥキディデスの罠についての言及が、最大の意義、との指摘もあった。
 報道などによると、米ハーバード大のグレアム・アリソン教授は「過去500年の間に新興勢力と既存の支配勢力が対立したケースが16回あり、うち12回が戦争に結びついた」と指摘している。第二次大戦前の日本・ドイツなどの枢軸国対米国・英国・フランスなどの連合国の対立もそれに含まれるだろう。
 そして今の米中関係は、その罠にはまる危険性が高い、ということである。米中首脳もそれを認識し、「回避発言」になったといえる。
  国際政治・外交は、感情を持った「生身」の人間が、互いに向き合いながら進めていくものである。罠をつくったり、罠ができたり、そこに、はまったり。ナショナリズムが背後に控え、ゲーム的な側面もあり、その結末を予測するのは、なかなか難しい。南シナ海をめぐる米中の確執を見てもそれが分かる。

 最近、言われているもう一つの「罠」がある。「中進国の罠」だ。経済が中所得国の水準に長期停滞し、先進国入りができない状況をいう。途上国が労働力などの低コストを生かし経済成長を実現、中所得国メンバーに入る。しかし、軽工業分野などで競争力を失う一方、先進国との間では技術格差があり、成長が鈍化する現象を指す。低所得国から中所得国になる国は多いが、高所得国の水準を達成できた国は比較的少ない。この罠を回避するには、産業の高度化が欠かせない。そのためには、技術の高度化、汚職撲滅といった社会の変革課題だ。

 こう説明すれば分かると思う。そう、中国は「トゥキディデスの罠」と「中進国の罠」という二つの罠に、向き合っているのだ。 

                                                      







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