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世界遺産               (2015年7月28日)




第39回 世界遺産委員会(ドイツ・ボン)




原爆ドーム 「負の世界遺産」
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、「明治日本の産業革命遺産」を世界文化遺産に登録することを決めた。土壇場まで日本と韓国との間で調整がスムーズにいかず、時間切れ寸前の登録決定だった。
 韓国側は戦時中、産業革命遺産の23施設のうち7施設に朝鮮半島出身者が働かされたとし、徴用に言及することを要求。日本は「1850年代から1910年までが遺産の対象年代で、時代が異なる」と反論していた。

 世界遺産は、文化・自然遺産を人類全体の財産として保護する制度で、資料によると、昨年までに文化遺産779件、自然遺産197件、複合遺産31件の計1007件が登録されている。各国が推薦し、最終的に世界遺産委員会で審議されるが、「歴史」にまつわる問題が浮上し、関係国間でもめるケースも見られた。

 その典型的な例は、タイとカンボジアの国境付近にあるヒンズー教寺院遺跡「プレアビヒア」だ。国際司法裁判所は1962年、遺跡そのものをカンボジア領に認定したが、双方が領有権を主張する遺跡周辺は、
未画定のままだった。2008年にカンボジアの申請で遺跡が世界遺産に登録されたことにより、軍事衝突に発展したのは記憶に新しい。この問題は、「人類全体の財産として保護」という理念より先に、領有権とナショナリズムがからみあい、対立がエスカレートしたといえる。
 

 実は日本がらみで過去にこんな問題もあった。広島の原爆ドームである。戦争末期、原爆が投下され、
広島は廃墟となったが、爆心地付近で数少ない被爆建造物として残ったのが原爆ドームである。
 復興が進む中で「原爆の悲惨さ」を物語る原爆ドームを「取り壊してほしい」との意見も多かったが、
市民や平和運動家らの働きかけもあって、「平和を訴える象徴」として永久保存が決まった。1996年には、世界遺産(文化遺産)への登録が決定された。しかし、審議の過程で、原爆を投下した米国は、登録に反対の姿勢をみせた。中国は審議を棄権している。

 一口に「文化遺産」といっても、その国と関係国のさまざまな「歴史」が反映されているものもある。
その国にとって、誇るべき文化遺産や平和の象徴であっても、関係国には、触れられたくない、世界遺産に登録されたくない「負の遺産」であるケースもある。

 今回の「明治日本の産業革命遺産」の登録は、曲折はあったが、その「負の遺産」を認知したうえでの判断であり、「世界遺産とはなにか」を改めて考えさせられた。






                                         







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