本文へスキップ

アジア・ウオッチ・ネットワークはアジアに幅広取材アンテナを張ります。

アジア・ウオッチ・ネットワークAsiaWatchNetwork


メニュー亜細亜 飛耳長目

ベトナムと詩人          (2016年11月29日)


 東京都内で11月、「チカダ賞記念国際シンポジウム」が開かれた。「チカダ賞」と言われても、ピーンと来ない方も多いと思うが、スウェーデン政府が「生命の
尊厳」を表現する東アジアの詩人を対象に贈呈している賞である。スウェーデン
の詩人でノーベル文学賞受賞者のハリー・マーティンソン氏の生誕100周年を記
念して2004年に設立された。
 賞の名前は、同氏の詩集『チカダ(“蝉”の意)』に由来している。日本では、宗左近氏、金子兜太氏らが受賞している。
 このシンポジウムには、ノーベル賞の有力候補といわれる北島氏(中国)や文貞姫氏(韓国)ら歴代の受賞者、日本からは、詩人の谷川俊太郎、吉増剛造の両氏らが顔を揃えた。その中で注目されたのは、イー・ニーさんだった。
  ベトナムベの女性詩人で昨年、東南アジア出身者で初めてチカダ賞を受賞した。来賓のマグヌス・ローバック駐日スウェーデン大使が「歴代受賞者を迎えてシンポジウムを開催していただき感謝したい。現代において詩は重要で、スマートフォンの時代だが、我々の内なる声を聴くことが必要だ」と挨拶。このあと座談会や詩の朗読会などが行われた。
 イー氏さんは座談会「詩と現実」の中で、詩とフィクションの関係について触れ「成功する詩は、読者がどう感じるかであり、嘘か真実かの二者択一ではないと思う」と話した。
 また、ボブ・ディラン氏のノーベル文学賞受賞にも言及し「(選考は)良い判断だった」と述べた。イーさんは、はるか昔、日本人町があったベトナム中部のホイアンの出身。この町に1994年に生まれた。1968年、ハノイ総合大学言語学部卒業し、「懐かしい道」、「川に来る」、「編み物をする女」などの作品集がある。

 私は一羽のメジロであり くしゃくしゃの 雑草の中に身を隠し 自分の歌声が あなたの歌となった

 イー・ニーさんの詩「運命の稲光の中に」の一節である。こうした詩が朗読され会場に流れた。イー・ニーさんの優しくぬくもりのある朗読・声に感銘を受けた。

 ベトナムは、「詩と竹の国」といわれる。13世紀後半以降、儒教知識人が国の実権を握った。文章が書けることと立派な詩をつくることは、その知識人らの必要条件だった。詩によって民族の独自性、誇りを強調する伝統は長く続いた。あのホーチミンも数多くの詩を書いている。イー・ニーさんもその伝統を受け継ぐ一人だろう。「生命の尊厳」をテーマにした「チカダ賞」にふさわしい詩人だ、と思った。












                                         







English version (英語版)



Photo


ビデオ











Asia Watch Network

Bangkok, Thailand