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チョロン(ベトナム中華街)      (2017年3月29日)




1967年制作の連続ドラマより
 前回は、天皇、皇后両陛下がベトナムで元日本兵の家族と面会したことに触れた。東南アジアの戦場に送り込まれた日本兵が終戦になっても、そのまま祖国・日本に帰らず、残留を決めたのはなぜか、について言及したが、その動機として、
@敗戦により部隊から離脱し、日本に帰れ  ば軍法会議にかけられる
A戦死した戦友を残して帰れない。遺骨
 収集などの慰霊のため
B敗戦で廃虚になった祖国への失望感
C現地での独立運動に関わった――を挙げた。
 ベトナムで多かったのはCで、陛下が面会したのも独立運動に関わった元日本兵の
家族だった。
  ベトナムの元日本兵が登場する『ゴメスの名はゴメス』というミステリー小説がある。1962年に発表された結城昌治の長篇スパイ小説である。ドラマ化、映画化もされているからご存知の方も多いと思う。
  小説は、南ベトナム解放民族戦線と政府側の秘密警察がからんだスパイ合戦が繰り広げられていた南ベトナム(当時)が舞台だ。スト―リーは、商社マンの坂本が失踪した前任者の香取の消息を追うところから始まる。その坂本の前に、さまざまな謎の人物が登場する。「トウ」と名乗る男はその一人で解放戦線側の情報部員として香取を引き入れ、坂本に接近してきたのだ。「トウ」は、元日本兵だった。
 失踪事件を追う坂本は、最後には自分も巻き込まれ、スパイ組織に監禁され、殺されそうになる。間一髪、通信社の特派員の森垣に助けられる。坂本は森垣の指示通り、出国の手はずを整えている「ミン」という男に電話する。「ゴメス氏の名をご存知でしょうか」という問いかけに、森垣に教えられた通り坂本は「ゴメス」と答えた。「ゴメスの名はゴメス」が出国・脱出のための合言葉だったのだ。実は、坂本を救った森垣も中国戦線で戦った元日本兵だった。

 この小説に描かれているチョロンという町は、首都サイゴン(ホーチミン市)の中心部から車で約30分のところにある。小説が書かれてから50年以上が経つが、いまでも当時と同じように「公司」、「飯店」などの漢字の看板が目立ち、中国風の寺院が並ぶ。ベトナム随一のチャイナタウンである。中越戦争(1979年)の際、多くの中国系住民が弾圧を恐れ海外に脱出し、一時はさびれたが、いまは台湾系住民も増えた。

 最近、訪れる機会があった。シンガポール、タイなどの東南アジア各地に住む華人とのネットワークが形成されているといい、チョロン地区はにぎわっていた。
 その雑然とした街並み、人波が押し寄せ、ムンムンする熱気あふれる商店街や市場の中にいると、元日本兵が現れ、「ゴメスの名はゴメス」という合言葉が交わされる小説の場面が頭によぎる。












                                         








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