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記念切手と葛藤        (2017年7月9日)



朴正熙元大統領の肖像が描かれた韓国の古切手
 朴槿恵・前大統領の父で、韓国の経済発展の基盤をつくった朴正熙・元大統領の記念切手の発行が、見送られることになった。
 今年は朴元大統領の生誕100周年で、その記念発行だが、朴前大統領の罷免、逮捕・起訴という事態を受け、父の朴元大統領の業績をも否定する声が高まっていたのだ。保守層は「政権の権力の乱用」と反発している。
 切手発行は昨年6月に決まり、今年9月に発行されるはずだった。これに革新系市民団体などが反対し、文在寅政権発足後の再審議の結果、発行が見送られることになった。これは、単なる生誕100年の記念切手発行にからむ問題ではない。
 韓国社会・政治における「断裂」を示す象徴的な事件だ、と感じた。
 朴正熙氏は、1961年、軍事クーデターを敢行し1963年から1979年まで大統領を務めた。この時代から「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長が始まった。いまや韓国は、有数の貿易大国である。
 その功績が評価され、歴代大統領に対する好感度調査を行うと、常に上位を占めてきた。「歴代大統領から最も好感を持つ人を1人だけ選ぶ」という最近の調査でも、2位だった。
 しかし、「漢江の奇跡」の陰では、民主化運動に対する弾圧が横行した。政敵であった民主化活動家の金大中氏を日本で拉致した、いわゆる「金大中事件」も起きている。

 韓国では、1987年6月の「民主化宣言」以後、こうした経済最優先の軍事政治が退潮し、民主化が進行、金泳三政権の誕生につながる。そして、金大中政権が成立する。このあと「革新」と「保守」の間で政権交代が起きるが、単純化して言えば、大統領選の結果は、その当時の国際・国内状況の中で、国民が「朴正熙路線」と「金大中路線」のどちらかを評価するかにかかってきた。
 この二人の路線がいまも韓国政治の大きな「対立軸」になっている、といえる。記念切手の発行見送りも、この大きな軸に沿い革新系の現政権の判断で決められたわけである。

 朝鮮半島は、韓国と北朝鮮に分かれ、「南北対立」が続く。そして韓国国内にも北朝鮮に融和的な革新系と反共的な保守系との政治的葛藤がある。それは、世代間の葛藤にもつながる。最近の「歴代大統領の好感度調査」の結果をみると、60代は42.5%、70代以上は55.0%が朴正煕氏を選んでいた。
 しかし、20代になると朴正煕氏を選んだのはわずか2.7%、30代は4.1%、40代は11.4%、50代は26.5%だった。世代間の断層がくっきり浮かぶ。
 こうした韓国内の対立は「南南葛藤」とも呼ばれる。南北朝鮮の分断・対立とともに、この葛藤も厳しい。












                                         









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