本文へスキップ

アジア・ウオッチ・ネットワークはアジアに幅広取材アンテナを張ります。

アジア・ウオッチ・ネットワークAsiaWatchNetwork


メニュー亜細亜 飛耳長目

大運河構想(タイ)         (2018年11月22日)


建設促進グループが公表したタイ運河のイメージ図


 タイのプラユット首相は、マレー半島の地峡に大運河を建設するプロジェクトについて、国家安全保障会議などに検討するよう指示したという。プロジェクトは南部のタイ湾側ソンクラ県とアンダマン海側クラビ県をつなぐ全長120キロにおよぶ運河を建設しようというものだ。
 この周辺でのマレー半島を貫通する大運河建設計画は、これまで東南アジアをめぐるパワーバランスの関係もあって、浮かんでは消えてきた。「クラ運河」構想とも呼ばれた。

 タイ湾とアンダマン海に挟まれマレー半島が細くなっている地域一帯をクラ地峡という。関係者によると、ここに運河を通す計画は、約300年前にさかのぼる。
 19世紀になるとスエズ運河、パナマ運河 などの建設が行われ、クラ地峡に運河を建設する構想もこのころから本格的に議論されるようになった。しかし、世界大戦などで立ち消えになった。いまから思えば、この時期が建設の最大のチャンスだったのかもしれない。
 第二次大戦後も何度か計画が再燃、日本企業が関心を示したこともあったが、政権交代やほかのプロジェクト・インフラ整備の優先などで日の目を見なかった。
 仮にこの運河が実現した場合、マラッカ海峡を通過するのに比べて1日〜2日間の時間短縮になり、燃料節約、物流コストのダウンなどの効果が期待できる。その一方で、マラッカ海峡の海運上の重要性が減り、シンガポールやインドネシア、マレーシアの国際的地位の低下につながり、経済的な打撃が予想される。
 中東方面からのタンカーなどの主要航路に当たるマラッカ海峡だが、防衛・安全保障面でも周辺状況は激変するだろう。
 こうした事情に加え、運河建設のネックは資金確保だった。100キロ以上にわたり掘らなければならず、また、建設に伴う環境破壊への対応策など考えると、膨大な資金と工期が予想された。

 ここに来てクラ運河プロジェクトが再び注目された背景には、中国の打ち出した「一帯一路」構想がある。中国の積極的な開発援助の動きや、東南アジアへの経済進出がタイ政権の「心」を揺さぶったのだろう。そうは言っても、建設着手までには、さまざまな「壁」があり、今回も構想倒れになる可能性も大きい。 
 ただ、マラッカ海峡の混雑緩和・安全航行が実現し、中国や日本だけでなく、東南アジア、南アジアの大経済圏の物流の促進、経済発展にとって大きなメリットがある。この大運河計画は、今後も人々の期待を集め続けることは間違いない。





                                         









Photo


ビデオ