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中所得国の罠            (2018年1月29日)



バンコク市内

 タイ経済の構造変化についての指摘が目についた。経済評論家の田中直毅・国際公共政策研究センター理事長が最近の新聞コラムで「かつての9%成長経路から3%程度への減速のなか、成長を遂げたタイの企業群は主に東南アジア諸国連合(ASEAN)域内への資本進出に忙しい。国内市場の成長鈍化のなか、海外進出を急ぐ」と指摘した。
 いろいろな意見や指摘があると思うが、タイ経済がある意味で分岐点に来ている、とは感じる。それは「中進国の罠」、「中所得国の罠」にタイが苦しんでいるということでもある。

 自国の経済が中所得国の水準に長くとどまり、高所得国(先進国)入りが果たせない状況のことだ。
 タイに限ったことではないが、一人当たりの国内総生産(GDP)が5,000ドルを超え、1万ドルを前にした時期が肝心だ。中所得国になった後、高所得国の水準を達成できた国は少ない。人件費の上昇や後発国の追い上げられる一方、先端技術力をマスターするまでには至っていない状況から競争力を失い、経済成長が鈍化するのが原因である。
 これはつまり、進出した日系企業などが主導する「モノ作り」も大事だが、中所得国は、さらに産業の高度化、先端技術の獲得や人材の育成に知恵を重ね、腐敗・汚職の根絶など社会システムの整備に取り組まなければならない、とのことだろう。

 参考になればと思い、こんなエピソードを。第二次大戦末期から冷戦時代にかけ、米国は国内に8部しか存在しない極秘書類である米軍の増強計画書の内容が他国に漏れているらしい、と気が付いた。情報機関のCIAが大学教授を集めて、まず、「新聞や議会で公表された事実や証言に基づいてどれだけ米国の軍事機密・軍事力を正確に把握できるか」という課題を出した。
 結論は「米国の秘密情報の95%は、新聞など公開情報・資料で得られる」。スパイ・諜報活動をしなくても公表された情報を収集し、的確に分析すれば、秘密情報の内容が得られる、というのだ。

 これは「モノ作り」にも当てはまる。例えば、売られている家電製品を購入し、それを解体、精査・研究すれば、その製品の基本的な仕組みや構造が分かり、同じようなモノが作れる可能性がある、ということだ。「公開情報で秘密情報が得られる」と同じ理屈。後発新興国は、こうした手段でいつかは中進国の「モノ作り」をキャッチアップする。
 単純な「モノ作り」に支えられた経済では、成長は生き詰まる。韓国や台湾は「罠」に陥り、伸び悩んだが、電機やITなどを核に産業を高度化し、高所得国入りを果たした。タイはじめ中進・中所得国の正念場である。












                                         









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